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82 監視

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 2017.6.30 誤記修正

 目を光らせるしかないか。

 あいつの犠牲を無駄にしないためにも、人類の未来のためにも。だが俺が城に入り浸っても問題があるだろうし、こういうときは。


「困ったなあ、うーむ。むー。これは困ったなあ。美人は俺の周りにたくさん居るが、大坂城に詳しいのがいないなあ。どこかに美人のガイドさんとか、いないかなあ?」


 ふふっ。何処からともなくカエル柄の着物を着た美人さんが現れた。

「ジョージ君。あんまり、あざといから釣られてあげるわよ。で、城に行って何をすればいいの?」


「おお、日本一ひのもといちの美人ガイドさんが四百年の時を超えて魔法世界にこんにちわ」

「で、何を探ればいいの?ボスっ!」


 おお、怖い。何気に蛙の簪で俺の目を狙うのは止めて欲しいものだな。

「ああ、大坂の城で間もなく此度の関ヶ原の戦評定が行われる。表向きは大規模な訓練だが、戦功報償がなければ武士も付いて来れまい」

「家来を養わなければならないからねぇ。武士も色々大変ね」


「そこに、俺が行って軽くかき回してやるから茶阿さんは、どさくさに紛れてあの助平秀吉に取り入り今後の動向を監視してほしい。でも、無茶はしないでくれあの太閤は俺たちの知っている秀吉さんじゃない。気を付けてくれ!」


 茶阿さんは、腕を組むと思案顔で二言、三言呟いたかと思うと、にっこりと笑った。

「そうね、報酬は後でたんまりと、あなたと秀吉様に貰うとして引き受けたわ。あ、こっちの太閤秀吉からも貰えば美味しいかも」


「じゃあ、これは前払いだ。取って置いてくれ」

 素早く、茶阿の腰を抱くと少し情感を込めて口付けを交わす。


「ううっん、もう、何だか悔しいな。キスが上達しているなんて。ふふっ、じゃあ行って来るね」



 大坂城では、先に行われた関ヶ原の演習についての戦功報償が間もなく終わろうとしていた。


「ふ、女には百万石も出す癖に案外、関白だ太閤だと言ってもケチなものだな」

「何を言う、無礼者!」


「さあて、いつまで偉そうにしていられるかな?」

 嘲笑うかのような声とともに一陣の風が吹いた跡には、漆黒のマントを纏った一人の魔導師が立っていた。


 家康は、まだ悪夢は消え去らず、己が運命の坂は未だ急な登りを残しているのかと心の中で愚痴った。


「これは、何奴?評定に関係の無い者がここに来てしまうとは、警備の者は何をしておったのだ。ええい、出会え、出会え!」


 刀を抜いた武士がおよそ、十人ほどが黒衣の魔導士に向かって刀を振り下ろしてくる。「ふっ、疾風」

「うおぉー、く、飛ばされるー」

「なんと、他愛もない」


 十人の武士が、突如評定の間で吹き荒れる疾風に吹き飛ばされ、刀を手放し、足の骨折など機動力が著しく低下していた。


「じゃあ、ここは目出度く。黄金の嵐」

 魔導士の手から、黄金色に輝く砂が、辺り一面を覆いつくす。


「ささ、秀吉様。こちらへどうぞ、いらしてください」

 カエル柄の着物を着た美女が、秀吉を奥の部屋に誘う。


 もう少し、遊んでやるか。

「じゃ、雷!」


 評定の間に居た大多数の者が、急な雷に動揺し、そして感電していった。


「邪魔したな、さらばだ」


 俺は、光を反射しない黒い球体を発生させるとその中に入っていた。


 襖を開けると、そこには赤い絢爛豪華な夜具が延べられ枕が二つ並べてあった。

「秀吉さま、恐ろしゅうございます。どうか、お情けを頂戴しとうございます」

「そのほう、名を何と言う?」


「加藤茶阿と申します」

「美しいのう、そちは側室になれ」

「うれしい。ああ、そこは。そんなぁー」

 もう、太閤様ったら手が早すぎだわ。気を付けないとミイラ取りがミイラになるわね。

「まあ。良いではないか。ここが良いのか、ほれ」


 ここだけは評定の間の雷にも勝る、激しい男女の攻防が繰り広げられていた。

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