7 回想
また、出会いが・・・
2017.1.2 章管理導入に伴い改稿
試練の刻、だった。
目の前には、魔物がいた。背丈は俺の5倍もある、頭には2本の角があり、真っ赤な目は、無数の複眼になっている。濃緑のボディーには、なぜかベルトを巻いていた。
「うおっ、と、と」
銀色のブーツが目の前には迫る、魔物、いや巨人の脚だった。
とっさに斜め後方へと、ジャンプしたが思ったより跳べず巨人の脚が、かすった前髪を数本散らす。
『見切り判定、A』試練の洞窟に仕掛けられた、魔道具が誤った判定をしていた。俺は、十分距離をとって(転生前なら、十メートルは跳べたのに)呪文の詠唱
できたのに。
何度か、巨人の攻撃を避けながら中威力の呪文を唱え、巨人を倒した俺は極々平均並のC判定で試練の刻を終えた。
終わった、「俺の転生人生も、終わったな。C判定じゃ、ろくな職にも就けず下手すると呆れた親から見放され勘当、根なし草か」
「さすが、見切りだけはAA判定ね。私たちも見倣ってあなたとの縁を切るわ。このマントをあげる、せっかく巨大な魔力をもって産まれたのにねえ。何がいけなかったのかしら。」
「母さん、うっ」
稲妻が駆け寄ろうとした俺の前を遮る、大地が割れ赤暗い溶岩の川が立ちはだかる。
「もう、縁を切ったのよ。あなたは、魔法貴族アトワーレ家とは何の関係もない、ただのジョージよ。さようなら、愛してたわ。私のジョージ」
俺も母さんたちを愛しているよ、言葉にしそうになり慌てて「お世話になりました、お元気で」俺は、母親に背を向けて歩きだした。
こうして、元サイボーグの俺は、十五年で転生先の親から見放され修行の旅に出た、漆黒のマントを唯一の旅の道連れとして。戦闘になると改造人間パワーに頼る癖もどうにか押さえ込み、魔導書も数冊は読み終えた頃、別れから一年位だったか、あの球体に飲み込まれたのは。
「あなた、おーい、聞こえてる。身分証を拝見させてくださいね」
黒髪の堅めのスーツを着た二十代前半の女性に呼び止められた。
「城の見学なら、身分証か許可証を見せてくれないと、私は加藤茶阿、ここでガイドのバイトをしています」