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57 終末の世界6

 応接室で俺たちは、白衣を着た南条結城ゆうきと向かい合ってソファに座っていた。真ん中に俺、右に茶阿さん左にティーガー、俺の膝の上ではネコが顔を洗っている。こいつ、元はホームコンピュータの端末の癖にやたらと猫力ネコりょく強いなあ、本当に。いつか、土鍋で丸くなっていそうで何か怖い。

「じゃあ、再開を祝って乾杯!コーヒーだけどね。でも、このケーキは行けるはずよ西城斎酒さいじょうゆきさんのレシピを再現するため、銀河を一瞬で横断できる円盤を建造したほどの科学力のすべてを駆使したんだから」

「さっきも言ったが、前世の記憶ははっきりとは覚えてないんだ。ぼんやりと『マゴットちゃん』とか変な名前が頭にこびり付いてるけどな」


「ふふ、そこは覚えてなくていいから。折角だから冷めないうちに食べてね」

 俺たちの前には、青い炎をまとったテニスボールサイズのチョコレートが浮いていた。俺は、炎が消える寸前にスプーンをチョコレートに突き刺し中身と一緒に口に含んだ。うーん、ブランデーの香りと薄っすらと焦げたチョコの苦みと中で溶けかけたはアイスクリームが混然一体となって絶妙のハーモニーを奏でる。

 

「流石、玲子ちゃん冴えわたる業だ。なるほど、冷めないうちにか。言いえて妙だね。恐れ入ったよ、この船の科学力には玲子ちゃんの技術が再現できている」

「確かに西城斎酒さん、あなたの言う玲子さんの腕は銀河でも五本の指に入るわ。この星の掛け替えの無いものの一つね」

「そろそろ本題に、この船の目的は何だい。それと、南条さんが協力しているのは何者なんだい?」


 白衣姿で腕を組み、一秒だけ目をつぶってから南条結城は口を開いた。

「我々の目的は、別に隠す必要もないけれどこの星、地球の掛け替えの無いものを滅びの時から回収することよ。ところで、あなたたちは『心』について理解できているかしら?」

「心って?俺のハートが燃えているぜの心か?」

「マスターの心を一生釘付けにしたい!の心ですね?」

「私のカエル愛は、誰にも負けない!の心ね?」

 ティーガー、健気だけどちょっと重いかも。茶阿さん、相変わらずブレませんね。俺もカエルの着ぐるみ着て迫ってみるか?


「ま、まあその心よ。でも、心は何に宿るかわかるかしら?あなた達の文明では、心臓だとか、脳だとか、

精霊とかに宿ると考えているようだけど、本当は違うのよ。本当はね、『心』と言われる、生命の精神活動は、ウィルスによってもたらされているのよ」

 え、なんだって。ウィルスって、あのB型肝炎とかインフルエンザのウィルスのことだよな?

「ウィルスって、インフルエンザとかの感染源で、自分単独では増殖できなくて、他の細胞に寄生して増殖するあのウィルスだよね」

 

「そのとおりです。で、このウィルスが生物の精神活動に影響することが判っています。これが、『ウィルス心化論しんかろん』です。他にも、短期間に謎の進化を遂げた人類の種の進化にも影響を及ぼしていると考えられています。こちらは、「ウィルス進化論」と呼びます。あと、科学的な証明はされていませんが、一部地域ではウィルスこそが宇宙を作ったという信仰にまで発展した「ウィルス神化論」まであります」

「じゃあ何かい、掛け替えの無いあんたたちの目的というのは、地球上のウィルスの確保なんだな?」


 一拍時間を置いて、南条結城は静かにうなずいた。

 


 


 


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