5 休息
2017.1.2 章管理導入に伴い改稿
2017.7.2 誤字修正
「な、何だ、くっ、う、うわー」
俺は、直径数十キロを越える漆黒の球体に飲み込まれていった。何とか抜け出そうと後ろを振り返ると虹の輪がゆっくり点滅しながら口を閉ざすところだった。
何だったんだ、あれは。謎の球体が出現する前、俺は数千を越える数多の魔物どもを前に、少々相手するのに飽きてきて範囲魔法で奴らを一網打尽にしようとした。
「少し、気合いを入れすぎたか?まさか世界を滅ぼした訳ではあるまい。だが、ここは、元の世界とは異なる。最初から知識を集めるのは数十年振りだなあ。こりゃあ、長い旅になりそうだ」
昨晩、馬なし馬車というか、テスタにこの世界についてのあらましを訪ねたりして解ったことは...
この世界では、魔法と言うものが知られていない。少なくとも馬なし馬車=テスタ(スポーツカーというジャンルで、総称としては自動車又は車らしいが)の一般常識では物語や神話の世界でしか魔法は存在しない。
「う、ううーん」
どうやら、テスタが目覚めたようだ。主より、下僕の方が寝ているとは昨晩可愛がりすぎたか?
「おい、寝坊助」
テスタは、俺の隣にシーツを巻き付けただけで腰掛けた。
「お、おはようございます」
少し、はにかんだように上目使いで朝の挨拶を口にする。
「うん、じゃあ出掛けるから、服を着ろ。寝坊した罰だ、飯抜きな」
「えー、そ、そんなー」
俺たちは、モーテルを出た、堀の向こうに雲を突くような大きな城が見える、大坂城だ。
これで「馬なし馬車」ともおさらば。