55 終末の世界4
「くぅ、なかなかやるわね」
「あなたもね、でも、勝つのは私、ジョージ様の横に立つのは私よ!」
南条由紀がテスタの僅かな隙を突いて放った飛び膝蹴りを強引に腕を交差させてブロックするテスタ。女子同士の戦闘とは思えぬ程の腹に響く衝撃音、あいつらを怒らせるのは控えようと思うジョージだった。
「二人共割とやるようですね。この分ならほっておいても問題ないでしょう、マスタ。一先ずティーガーに乗ってUFOの調査を始めるのが吉でしょう」
シャム猫が、俺の右足に頭を擦り付けながら、唆す。
「それも、そうか。ティーガー、来い!」
俺の召喚に答えるように、プラチナの輝きの中からキングタイガーがハッチを開けて現れた。
ティーガーの中に入ると、金糸で縁どられたガマガエル柄の振袖を着た茶阿が既にちゃっかり座席に座っていた。
「ふう、流石日本一のガイドさんだ、ここまで付いて来るとは。じゃあ、あそこの円盤について教えてくださいね」
「ふふ、私はあなたの行くところならどこでも現れるわ。それが私の使命、豊臣の世が続こうが、途絶えようがそんなことには影響されない。
そうね、あの空跳ぶ円盤はここ数年南極の極点付近で何度も目撃されているものね。そもそも空飛ぶ円盤の目撃例は昔からいくつもあるけど、千九百四十七年アメリカ合衆国のワシントン州の上空で見られたのが有名ね。
結構、見間違いや、トリックとかレンズの汚れだとかってこともあるけれど。でも、いまここで見ているものの正体は不明だけど、どうやら本物のようね。気を付けて調べましょう。ジョージ、ティーガーちゃんもね」
「にゃーお、マスタの側には私も控えていることをお忘れなきよう」
シャム猫が、怪しく赤く光る眼で茶阿をねめつける。
「っふん、マスターを守るのは私の仕事、それは誰がそばにいても同じ」
「はい、はい。ネコさんも、ティーガーちゃんもいっしょにジョージ君を守ろうね。あの円盤は、正直言ってヤバいかもよ。分光解析では地球上の物質とは違うようだしね」
茶阿さんが、ネコと張り合うティーガーの意識をいい感じに、空飛ぶ円盤へと戻していく。
「じゃあ、空飛ぶ円盤に接近するぞ。ティーガー!気をしっかり保てよ。うーん、はあー。飛翔薄冷!」
俺が、気合で俺たちが乗った総重量十数トンの質量を持つキングタイガーを、室内と外気の温度差を利用して浮遊させる。あまり、スピードは出せないがスターリング機関(科学)と飛翔(魔法)知識の合わせ技だ。
「流石ねジョージ君、まさかとは思ったけど戦車ごと飛ぶとは思わなかったわ。せいぜい手をつないでみんなで飛ぶとか、お姫様抱っこで私と二人で円盤を偵察とかなんて、ちょっと素敵ね」
茶阿さんが、茶目っ気を出しながら少し遠い目をする、心なしか頬が赤い。
「まあ、どんな危険があるか判らないから、今はまだティーガーの分厚い装甲の中で安全を図る必要があるよ。それより、ネコ!円盤の解析を始めてくれ。ここからが、お前の本領発揮だろ」
「マスタ、解析開始します。しばらくお待ちを、現時点では武装の活動を認めませんが、油断なきよう。ティーガーさんも、ロックオンはしないように気を付けてください。敵対行為とみなされて攻撃される恐れがあります。現時点では敵で無いかも知れませんのでね、できるだけ相手を刺激しないように」
俺たちは、徐々に巨大な空飛ぶ円盤へと近づいて行った。地上では、テスタと右の回し蹴りと由紀さんのハイキックが互いに交差して膠着状態となっていた。そして、円盤に向かって浮遊していく俺たちに気づくとやがて戦意を失い、俺たちの行方を熱心に目で追いかけるのであった。




