53 終末の世界2
ちゅっ。マスターありがとう、とても温まりました。ティーガーは短いキスの後、身体を離した。
うん?「ティーガー、おはよう。眠れたか?」
何だが、甘い香りがした。すごくいい気分で目覚めることができた俺は、ティーガーにコーヒーを頼んだ。
「はい、マスター。温かくて、よく眠れました。もう、平気です」
ティーガーは、なぜか頬を染めながらコーヒーカップを渡してくれた。
「ネコ、今日の予報はどうだ?」
「マスタ、最高気温マイナス十度、最低気温マイナス三十度、風速十五メートル。あまり外出はお勧めです。できません。どうしてもと言うなら、ティーガーさんに乗っていくのが良いでしょう。マイナス四十度までは稼働可能です」
シャム猫が、予報を告げた。
「ティーガー行けそうか?」
「はい、マスター。私はあなたの盾であり、あなたの剣です。いつでもお守りします」
俺は、プラチナブロンドの髪を撫でてやりながら頷いた。
「よし、出発だ!」
外に出ると、漆黒のマントに風が絡みつく。ティーガーの身体が銀色に眩く輝き、やがて大きく膨らんでいく。光が収まった時には、ティーガーの姿はキングタイガーに変化した。
「マスター、私の中に入ってきてください。もっとマスターを感じられるように」
俺とネコはティーガーに乗り込むと、ティーガーは力強く前進した。
どこを見回しても、雪と氷の世界だ。時折襲ってくる氷蛾を、軽く魔法で炙って撃退する。
「ネコ、近くに人は居るか?」
「半径三百キロメートル以内に反応はありません。耐熱シールド等により、痕跡を隠している可能性三十パーセントです。振動探知にセンサーを切り替えますか?この場合、ミサイル等のロックオン探知が遅れる可能性があります、危険度が四十パーセント上昇します」
「センサーを切替えろ。生存者を確認する方が優先だ。うん?ところで、おれは誰を探してるんだ、ネコ」
ピンポーン、ピンポーン!
「うーん、寒いなあ。ネコ、誰が来たんだ?」
「マスタ、来客です。か、勝手に入らないでください。マスタの許可がまだありません」
なんか、ネコが慌てているようだな、面白いからもう少し見物かな。
「おーい、ご主人様、来て差し上げたぞ。もう、ツンデレなんだからー」
その声は、テスタか。
赤いドレスを纏った良い女が、ワイン片手に入って来た。少しふらついて見えるところから結構飲んでいるのだろう。
「ネコ、コーヒー二つな」
「ええ、私はこれ飲むからいいよ。ご主人様も飲もうよ」
「いや、俺はいい。身にならない物は、飲まない主義だ」
俺は、ネコが操作したマニュピレータからカップを受け取ると片方をテスタに渡して一口啜った。
ネコが俺の膝に飛び乗って、にゃーと一声鳴く。
さて、探検と行くか。
「テスタ、ネコ行くぞ」
俺たちは、外に出るとテスタに乗込み南を目指した。ときおり、氷蛾が襲ってきたが火炎魔法であっけなく処分できた。
三日掛けて、俺たちは南極にたどり着いた。なぜか、空飛ぶ円盤が極点を中心に旋回している。
「あの空飛ぶ円盤は何だろうか。ネコ、分析できるか?」
「円盤の外装は、地球上の物質ではありません。今のところ敵意は感じられず、調査の必要が感じられます」
「まあ、近づいてみればわかるか。行くぞ、テスタ」