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52 終末の世界

2017.2.12 誤記修正

 さ、寒い、うん、なんか寒い。いったい何だというのだ?こんな時は。

「おーい、ネコ!寒いからこっち来いよ!」

「マスタ、私は湯たんぽや、ヒーターじゃないですよ。まったく、もう。抱き着くならテスタさんや、ティーガーさんに覆いかぶさればいいじゃないですか?待ってますよ」

 文句を言いながらも、シャム猫は俺の毛布に潜り込んで股間の上で丸くなる。


「おお、温かくなってきたな。このエコな防寒対策の難点は、乗せている湯たんぽによっては、重いということだ。ネコ、お前もごろごろ寝てばかりじゃなくてたまには、ネズミでも捕まえて来いよなあ」

「ところで、今日の天気はどうだ?狩りはできそうか?」

「マスタ、私は湯たんぽじゃないですし、太ってもいません、スマートなもんです。天候は、日本ひのもと全土、終日大吹雪で視界3メートル未満、最低気温マイナス30度、最高気温マイナス10度、風速25メートル、通常の人類が狩りを実施した場合、九十九.九九パーセント遭難します」


 そっか、じゃあ今日はふて寝だな。俺は、毛布を肩まで引っ張った。

 ピンポーン、ピンポーン!

「こんな日に、集金か、NHKの勘優?はあい、どなた」

「マスター、こんにちわ。と、突然で申し訳ないですが、匿ってください!早く!」

プラチナブロンドを肩まで伸ばした、青い瞳と右の銀の義眼が美しい、ティーガーがドアの外に分厚い防寒服を着こんで立っていた。何故か頭のフードは透明なため、綺麗な髪が隠れずに済んでいる。

 

 走ってきたのか白い息が結晶化して陽光を煌めかせる感覚がかなり早い。

「ああ、今開けるから待っててくれ」

 ティーガの後ろから、透明な氷のような羽を持つ蛾の大群が忍び寄る。

 俺はドアを開け、ティーガに迫りくる氷蛾の群れを炎魔法で焼き尽くすと彼女を抱きしめて部屋に誘った。

「マスター、助かりました。ちょっと、気晴らしに狩りをしていたら蛾の住処である洞窟を破壊してしまい追いかけられて、弾薬が底をついて難儀していました。ふう、駄目ですね私って」

「まあ、今のご時世弾薬補給は難しいからな。気にするな、それよりここで温まってゆけ」

「にゃーお」

「あ、ネコさん。こんにちわ、お邪魔しますね」

「どうぞ、ティーガーさん。コーヒーでも入れましょう」


「ふう、おいしい。ありがとうネコさん」

「どうですか、斎酒ゆきさんに作って貰った、ブルーチーズケーキは?」

「ええ、マーマレードでコーティングされ、きつい匂いを感じさせず後味がさっぱりとして、とても美味しいです。」

「なんだ、ネコ。玲子ちゃんのケーキが褒められてるのであって、お前の手柄じゃないぞ、偉そうにして」

「マスタ、斎酒のパティシエとしての成功は私の願いの一部です。うれしいに決まってます!」

「まあ、玲子ちゃんのお菓子が絶品なのは俺も知ってるよ」

 俺の失われた記憶の中の玲子と西城斎酒が、だいぶ同一人物として、認識できてきたようだ。いや、同じだが、違う。例えて言うなら、同じ女優だが、役柄が違えば見た目も雰囲気も違う個性となる。多分、そういうことなのだろう。


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