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49 流転

2017.2.4 修正

 俺が秀吉さんの元へ来客をかき分けながら駆けつけようとしていると、振袖の女性が俺の左腕をとった。何を今、急いでいるんだ分らないのか?

「何を慌てているのじゃ?安心せい、毒など盛っていないわ。毒使いの私の目をごまかせるはずもなかろうが、ジョージ 久しぶりじゃな」


 振り袖姿の胸はちっちゃいが艶っぽい矛盾した娘が俺に話しかけてきた。徳川徳子、柳生新陰流の使い手だが、祖父吉宗に心酔して、日夜毒使いへの道を邁進し、剣は護身にしか使わないという変わり者のお庭番だ。


「・・・そのとおりです、マスタ。この増築された大展望室と旧天守閣は構造体補強のため通常のエレベータやエスカレータ、階段等を設置できず、物質転送装置を使っています。このため、バイオフィルターの作動により毒物はおろかウィルスすら此処への通過はできません。ご安心ください」

 

 ティーガーに抱かれたネコの説明に俺も納得する。

 物質転送の原理は簡単だ、物質とエネルギーは相互に変換できる。例えばザッハトルテを転送する場合、

事前準備としてザッハトルテを分子構造に至る細部まで測定する。そして、ザッハトルテをエネルギーに変換して回収し、分子構造の情報と共に受信部へ送信する。

 受信部では、解析した分子構造の情報を元に、受信したエネルギーを使用してザッハトルテを再構成する。このとき、有害な物質やウィルスは送信データから除去する、

 また、風味を良くするためにブランデーやチョコレートをより良質なものへ、歯触りを変化させるなどのアレンジを行うのが最近はやりの料理技術、「転送クッキング」としてもてはやされている。


 これを称してバイオフィルターと呼んでいるが、別段物質的なフィルターが有る訳ではなく、有害な物質を除去する仕組みである。しかし、エレベータ替わりに、物質転送機とは、なんとオーバースペックな建造物なんだこの城は?秀吉さんも大概、ぱねえな。


 それは、それとしてホストに挨拶しなきゃな、人として。それに玲子ちゃんとも話したいしな。俺は、テスタには徳子の様子を監視していろと適当な仕事を与えて身軽になって玲子ちゃんの元に急ぐ。プラチナブロンドのティーガーに抱かれたネコも一緒だ。こいつは役に立つからな。


「やあ、玲子ちゃん。もしかして、今日は君のスイーツが楽しめるのかなあ?」

「ふふ、うれしいな。ジョージから催促されるなんて、昔みたいね」

 玲子ちゃんが、嬉しそうにボーイにデザートを持ってくるように指示する。

「相変わらず、ジョージはマイペースよのう。しかし、西城社長のスイーツなら楽しみなのもうなずけるのう」


 ボーイがワゴンを運んできて、各テーブルに配り始めた。

「さあ、秀吉殿、ジョージ。私の自信作よ、堪能してね。この天守閣の質感を出すの、苦労したのよ」

 配られたスイーツは、新生大阪城とその横には青がかった尖塔、高層建築物世界一の座を奪われたドバイのバージ・カリファが並んでいた。うん、うまそうだ、よだれが出るくらい。






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