48 未知への遭遇
2017.2.1 若干表現を修正、加筆
俺たちは、秀吉さんに招かれて大阪城の新天守閣に来ている。
負けず嫌いの秀吉さんが、ドバイの高層ビルに居城が高さで二十八メートル負けていることに気づいてから増築計画、建造、落成の流れはアッという間だった。
バージ・カリファを追い抜いて、世界一の構想建造物となった新生「大阪城」、さてその高さは八百八十八メートル、末広がりの良い数字が三つも並ぶ首都大阪の、いや世界一のランドマークだ。
「ジョージ君、久しぶりね。名古屋から帰ってきたらすぐ築城に駆り出されてもう、寝る間も無いほどだったわよ、だからきつかったこのドレスもピッタリ」
茶色のラメ入りパーティードレスで極めた茶阿さんが、ぼやきながら腰をくねらせターン、フィニッシュ、流し目の三段攻撃。
へーそんなことがあったのか、おお、艶っぽい、やっぱ名ガイドは違うなあ?
「それは、築城の名人と誉の高い加藤家の当主ほど大阪城の増築などという未曽有の大工事を任せられる人材は無いでしょうから、仕方ないと評価します。八百メートルもの建造物に、後から増築するのはとてつもない困難を超える必要があります。ゆえにマスタの感性は、情弱と呼ぶに値します。もっと世間の知識を私から教わることです。あと、ちょっとエロいですよ」
プラチナブロンドのティーガーに抱かれたシャム猫のネコの瞳が、怪しく赤く輝く。
そういえば、秀吉さんの姿が見当たらないな?主役はどこだろう。
ふっと、照明が消え再び会場を明るく照らした時にはステージの上に、秀吉さんが二つの模型を並べたワゴンの前に立っていた。一つは、背の高いビルを模しており、もう一つはそのビルよりも高い日本一、いや世界一の城、大阪城の雄姿だった。
「今宵は、新天守閣の落成式にお集まりいただき、大儀であった。承知のとおり我が大阪城はドバイにあるバージ・カリファを抜いて八百八十八メートルとなり世界一の高層建築物となった、めでたい、ほんとうに、めでたいのう。今宵は、存分に飲んで食って楽しんでくれ」
城内の招待客の中には日本中から集まったおり、それこそ反豊臣勢力もいる。だが、やれやれと呆れる者もいるが概ね秀吉さんの暴挙に好意的な反応だった。
「いい眺めですね、あんなに車が小さく見える。うわ、あの赤い車お腹に響く音がすごいわ。十二気筒サウンド、今いないテスタもきっとこんな爆音を響かせて走っているのでしょうか。」
ティーガーがなんか、言葉を零してしまったため、そのことが実現したのだろうか?
「もう、私を置いてけぼりにして尾張に行ってたかと思ったら、今度はお城のパーティーに連れてきてもらえないなんて、私はどこぞの『灰かぶり』か。もう、許さないんだから!」
赤いスポーツカーが城に乱入して、長い階段を駆け上がりとうとう俺たちがいる地上八百メートルにある展望台、現パーティー会場にドリフトで登場した。
そして、皆の注視のなか、赤い車体が薄くぼやけて霞んでいくのとは真逆に、赤いドレスを纏った金髪のいい女が現れた。
「マスター、テスタのエスコートよろしくね。これ以上機嫌を損ねると、暴れだしかねない」
「マスタ、赤い服の金髪女の躾がなってないですよ、早く常識だとか、作法だとか躾てください。そんなことだと、笑われてしまいますよ、仮にも貴族の息子でしょうが」
ティーガーが、テスタを気遣い、ネコが俺の失態を面白がって揶揄する。ほんと、いい性格になったもんだ。俺は、ネコの顎を撫でつつ、ティーガーにキスをしてから、イタリヤ生まれのじゃじゃ馬の所に向かった。
「おい、テスタ。下僕の分際で、よくも勝手に暴れまわったな。罰として、一曲踊れ、俺と」
俺が差し出した手に、テスタは頬を染めながら指を絡めた。
いつの間にか、生演奏の音楽がダンスミュージックに変わっていた。甘く少し切ない曲に合わせて俺たちは踊った。意外とテスタも俺のリードに逆らわずに踊っている。
秀吉さんが、主賓席に戻ると、ウエートレスの制服の綺麗な女性がグラスを捧げ持って近寄る。
俺は、はっと気づくと踊りをやめテスタを引っ張りながら秀吉さんの所に向かう。
「ほう、尾張の現当主が態々駆けつけてくれるとは、今宵はほんとに良いよるじゃ」
「西城斎酒、お召しに従い参上しました。このたび大阪城が世界一になったこと日本のものとして大変うれしく存じ上げます」
秀吉さんは、斎酒から渡されたグラスを斎酒のグラスと軽く合わせると乾杯していた。
おい、毒見とかしないのかよ?相手は製薬会社の社長、毒なんか使い放題じゃないか?間に合え!




