47 崩壊
タイトル番号修正 時空連続体が不安定で
玲子ちゃん改め、西城斎酒は地球滅亡という、とんでもな発言をした。普通なら電波少女なんだろうが、それを言うと俺自身があまり以前の記憶は無いが転生者で、しかも魔法が幅を利かせる異世界からの転移者だ。
だと言って、簡単に世界滅亡説を信じる訳には、いかない。
プラチナブロンドの少女が銀の右目を輝かせて、俺の袖を引っ張る。
「マスター、せめて秀吉様の引導は、私にやらせて。せめてもの恩返しに苦しませずにあの世に送りましょう」
おい、速攻で信じるなよ。それも美味いスイーツを作る人に悪人はいないとか、とんだ食いしん坊、いやお子様キャラだ。
「良い娘なティーガーは、置いとくとしてどういう理屈で秀吉さんを殺すと世界は救われるんだ?もう既にこの国の体制は固まっているし、むしろ世界は平和なんじゃないか?」
俺は、疑問を投げかけた。世界と天秤に掛けて、秀吉さんを殺めるのは吝かではないが、ずいぶん生きているから楽にさせてあげたい気分だし。
そうねと呟き、わずかの間目をつぶる、西城斎酒が再び口を開いた。
「たぶん、今の状況が異常で、だけど大変良好な状態であるとあなたには感じられるでしょうね。でも、これから世界は滅亡へと、急速に向かっていく。このままではあと数年で、地球は滅ぶわ」
「その理由はね、そちらの茶阿さんならご存知よね。関ヶ原以降の歴史への介入により、増大するひずみが間もなく次元断層を崩壊させることを。そしてその原因を作ったのが、今の秀吉であることを」
「ええ、豊臣の予想シミュレーションでも数年後の次元断層の崩壊は予想され、今その回避方法を研究中よ。難しいことは解らないけど、きっと解決方法が判るはずだわ」
やれやれと言う表情で茶阿さんの答えを聞く斎酒さん。
「何も、現在の秀吉を殺してくれと言っているわけじゃないわ。関ヶ原の合戦の前に戻って豊臣秀吉の謀略を食い止めて貰えば、済むことよ。正しい歴史に戻すだけ、本当なら関ヶ原の前に亡くなった人なんだから今頃のさばるのがイケないのよ」
「て、ことは俺に過去に戻って秀吉さんの邪魔をしろということか?なら、別に秀吉さんを殺す必要はないんだな?」
俺は、わずかに希望の灯が点るのを感じた。
「ええ、でも事が成った暁には、今の秀吉はここに居ないわ。それが、あなたに秀吉の殺しを依頼するということよ。地球の崩壊を、次元断層の崩壊を止めるにはこの方法しかないのよ。お願いするわ、ジョージ。私を信じて!」
深々と頭を下げる。西城斎酒の肩は、親にはぐれた迷子のように震えていた。
俺は、爺さんと若い娘を天秤に掛ければどっちに目盛りが振れるか分かり切ったこと。
「話は、解った。だが、断る」
「なぜ、私のこと信じられないでしょうけど。信じて欲しい」
悲痛な面持ちで、斎酒さんが俺を縋りつくような目で見つめる。茶阿さんは、ほうと溜息を吐く。
「いや、斎酒さん、いや玲子ちゃんのことは信じている。けど、まだ時間があるんだろう?それまでは、大坂の回避方法を模索する時間をやって欲しい」
「じゃあ、タイムリミットになったら私が迎えに行くわ。でも、あなたに行って貰う前提でこちらは準備を進めておくわ。あと、早くて三年で次元断層の崩壊が始まるわ。だから、二年後の二千十九年の七月に出発してもらうことになるわ」
「わかった、その前に回避手段が見つからなければ俺が関ヶ原に行って、爺さんをぶっ飛ばして止めさせてやるよ」
「ありがとう、ジョージさん」




