46 依頼
ソファーに座る俺の膝の上には、ネコが乗っている。もう、ネコの瞳の色は普段の色に戻っている。かすかな記憶では黒い招き猫型ホームコンピュータの端末だったはずだが、普段そんな重い物を乗せるような趣味は俺には無かったと思う、いや記憶にはない。
だが、青い瞳のシャム猫のネコが乗っている今に、なんだか落ち着く。
なんか、右隣に座るプラチナブロンドの少女がネコを撫でたがっているようだが、伸ばしていた手を引っ込めて我慢しているみたいだ。というか、隣の茶阿さんにティーガーは頭を撫でられてしまっている。
俺の左隣はアスラが仏頂面で座っている。じゃあ、西城斎酒の話を聞こうか。
「ところで、さっき言っていたお願いって何だ?ネコが世話になったみたいだから俺にできることなら聞くが、言ってくれ」
俺は、皆の様子を見てから西城斎酒に話の続きを促した。
「ええ、ここからはあなたの古い友人としてでは無く、尾張徳川の現当主としてジョージ殿にお願いするわ。
豊臣秀吉を殺して」
西城斎酒は、深く頭を下げた。
茶阿さんが、無言のまま冷めた目で斎酒を睨む。冷たい殺気が部屋を満たすが、すぐに手を出す様子ではない、威嚇?
間を開けずに斎酒の後ろには長身黒髪の美人さんが剣に手を掛けて、侍っている。確か、柳生利厳といったかそのせいで茶阿さんは攻撃を踏み止まったのか。
「なぜ、秀吉さんを?」
俺は、素直に疑問を口にした。
「話すと長い話になるわ。私が何回も転生していると言ったのは事実よ。そこを信じて貰えないと、あとは頭のおかしな女の独り言になってしまうの。解ってね」
頭を上げた、斎酒は語りだした。
「あれは、何回目の転生だったのか、もう回数は覚えていないけどね。千六百年の関ヶ原の戦い、あの時あり得ないことが起こったの、既に死んでいたはずの秀吉が蘇って徳川側の武将に裏切らせ遂に豊臣側が勝利したのよ。そして今もなお、日本牛耳っているわ、あの男は」
斎酒は悔しそうに、言葉を切る。
「十三回目の転生になります。斎酒様が関ヶ原の戦いをご覧になったのは」
ネコが、どうでもいいことを補足してくれた。空気読めないのは、いつものことか。俺はなぜか納得している。
玲子ちゃん、いや斎酒さんは、徳川の復権を願っているのか?しかし、今更、秀吉さんを殺したところで徳川の世の中になるとは思えないが。
「ネコさん、ありがとう」
「こういうお願いをすると、徳川の復権を願う愚かな女としか思えないよね、ジョージ。でもね、私が秀吉を殺して欲しいのは日本のためなの。
いえ、秀吉を殺して、歴史を戻さなければ日本だけじゃなく地球が滅ぶのよ」




