40 進呈
2017.1.10 修正
さて、どうしたものか?俺の勘では南条由紀所長は敵ではない。それに昔出会ったような懐かしさすら感じる。まあ、俺の遺伝子を調べたところで問題が出るとは思えないが、それにたかが髪の毛一本位惜しくもないけど。
「わかりました、ただ他の方に強制する気はないので本人の意思に任せたいと思います。よろしいですか?」
「ありがとうございます、ジョージ様。一生大事にいたしますので出来れば二本いただきとうございます。他の方については、もちろん自由意思で一本だけ提供いただければ結構でございます。なにとぞ、よろしくお願いいたします。」なぜに、俺だけ二本とか、一生大事にとか表現が大げさなのかは疑問だが、俺は髪の毛を二本抜くと由紀さんに差し出した。
由紀さんは、俺の髪の毛を手拭いで包んで大事そうに胸元にしまった。
「私は、バイトだから遠慮させてもらうわ。べ、別にあなたのこと信用してない訳じゃないんだからね」茶阿さんがツンデレさんみたいな感じの態度で断った。なぜだ?
「はい、ご主人様がいいなら私も預けるよ」テスタは一本金髪を抜くと、由紀さんに渡した。
「ありがとうございます」
「マスターが認めたなら、渡す」ティーガーはプラチナブロンドの髪を一本抜くと差し出した。
「ありがとう、皆さんのご協力で異能と遺伝子の研究も一歩進めることでしょう」由紀さんが深々とお辞儀した。
「ところで所長さん、政府転覆を狙っている輩について心当たりは無いですか?因みに京都のお庭番と御所はシロと見ていますが」
「うーん、研究にしか興味ないから私。政治向きのことは何分不勉強でお力になれず済みません。まあ、京に水戸と来たら後は、紀州か尾張ですかねえ。あくまでも素人考えですけど」
「じゃあ、あなたにとって紀州と尾張で嫌いな方は、どちらですか?」俺は訪ね方を変えてみた。
「そうねえ、どちらかと言えば尾張かしらねえ、親戚筋でやれ家格が上だのと威張っていますもの。紀州はご先祖様の努力の成果と自分の価値を混同するような方は居られませんし」・・・・・・
「あはっ、身内の恥を図らずもらしてしまい、申し訳ありませんでした。でも、ジョージさんはなんだか他人のように思えませんの私」
「いえ、とても参考になるご意見ありがとうございました。また、何かありましたら連絡いただければ、お力になれることもあるかと思います。では、本日は貴重なものを見せて頂いて、これで失礼いたします」
「はい、そのときは、是非お力をお貸しください!」凄く、気合の入った言葉だった。
そして、俺たちは水戸を後にした。