39 研究所
翌日、俺たちはバイ研の受付に現れた。
「受付のお姉さん、南条由紀さんにお会いしたいんだが、どこへ行けばいいんだ?結構広くて迷いそうだ」
「はい、所長にご用件ですか?確認いたしますのでお名前をお伺いしてよろしいですか」
「俺は、ただのジョージだ」
「招致いたしました、ただいま確認いたしますのでしばらくお待ち願います」はい、只野ジョージという方が所長に面会したいと、ええ、他に四名女性の方が、はいそうです漆黒のマントを着用されています。この時期、暑くないんでしょうかねぇ?はい承知いたしました」
「只野様、まもなく所長が来られますので、もうしばらくお待ち願います」
「わかりました、ただ俺の名前はジョージだけだからな。説明するの面倒くさいからいいけどな」
「はい、申し訳ありませんジョージ様、素敵なお名前です」受付係がべんちゃらを言う。
「うふふ」、「はは、「マスターったら」、「・・・・・・」茶阿さん、テスタ、ティーガーがやり取りを
微笑ましそうに笑った。アスラだけ、意味不明のようだが。
スタンっ、「お待たせしました。ちょっとミーティングが長引いてしまって、ジョージ様」吹き抜けになっている階段の3階分を飛び降りるほど、急いでるわけじゃなかったがなあ、身軽だ、結構胸にボリュームあるのに。
「いや、こちらこそ所長さんに出迎えてもらえるほどのVIPじゃないけど、逆に恐縮してしまうよ」
「いえ、ここ十年ではあなたが一番の重要人物よ。少なくとも私にとってね」
「では、ジョージ様とお付の人達ご案内いたしますわ」
まず最初に入ったのは、高速で回転する透明なドラム缶が複数並んでいる。内部の様子がモニターに映し出されていた。モニター画面ではハエ、蛹、ウジ虫が無数蠢いていた。
「ここでは、高重力下での遺伝子への影響を研究しています。あの透明なカプセルの外側付近では地球での三倍、3Gになっています。ハエが一生懸命羽ばたいていますが自重を支えきれずに飛び立てない様子が判るでしょうか?」
次に案内された部屋には、大きな透明ケースが設置され、中には昨夜のパーティーで紹介された蝶が飛び回っていた。南条さんが合図をすると毒々しい色のガスが噴出した。
「この蝶たちは、有害物質を分解してエサとしています。先ほどPM2.5を投入しましたがあと10分程で分解することができます。色についてはわかりやすいように無害な物質で着色しています。そこに計測器の表示があります。先ほどガスを投入した時に100にセットし、ガスの濃度を表示するようにしています」
見ていると、透明ケースの中のガスの色はどんどん薄まっていき、デジタルの数字が減少していく。
このあと、いろいろな施設を見学させてもらい大変勉強になった。
「では、最後にここを訪れた方には全員にお願いしているのですが、あなた方の遺伝子を提供してもらえませんか?いえ、痛みはありません、唾液、つばを少し頂くだけです。今後の研究に役立てるためです、決して悪用するようなことはいたしません。どうか、お願いいたします」南条由紀所長は、俺たちに深々と頭を下げた。
唾液を提供するだけで、貢献できるのか。うーむ。