37 パーティー
パーティーに着ていく服、どうしようかな。まあ、いつものマントでいいか。仮装パーティーなら、あとは仮面でもつけて吸血鬼とかやれそうだが。他に仏像とか、車とか、戦車とかになれる下僕もいるしなあ。
コンコン、誰か来たみたいだな。「はーい。すぐ行くよ」
「これ、ジョージ君に合うと思って、今夜のパーティーに着てね!」茶阿さんが、タキシードを渡してくれた。でも、これ既製服じゃなくてオートクチュールじゃないか。いつ測ったんだ?
「目で測ったわ、ガイドを舐めて貰っては困るわ」さっそく着てみると俺の身体にフィットした。「ありがとう、じゃあ、お礼にこれを」俺は、隠し持っていた光沢のある茶色いシルクのドレスを茶阿さんに渡した。
ふ、まあ私の好きな色を覚えてくれたようね、いつも茶系統で攻めた甲斐があったわ。は、オーダーメードね、しかもレースの刺繍飾りがカエルとは、なんて趣味がいいの。惚れてしまいそう。「ふふ、やるわねこの短時間でドレスを用意するとは」俺は、にやりと口元を綻ばせると、ブラックカードを見せた。
「なるほどね、それを使えば超一流の職人に特急でドレスを仕立てさせるのは造作もないわね。それにしても私のこと、意外とわかってくれているのね?」
水戸城にリムジンで乗り付け、受付に招待状を渡すと、俺は茶阿さんをエスコートして舞台にあがった。
パーティー会場では、大勢の客が小グループを作って談笑している。さて、大物は来ているかな?
俺は近くのウエーターからカクテルを貰うと、一つを茶阿さんに渡した。
「ところで、水戸のお偉いさんはどいつかな」
「ありがとう、そうね今日のホストである徳川昭武はあそこにいるけど。他に目ぼしいのは居ないみたいね」
生演奏が始まったので、「一曲お相手願います、茶阿さん」「ふふ、喜んで」
ちょっと、風に乗って茶阿さんと優雅に踊っていると曲の終わりを見計らって徳川昭武が近づいてくるのが見えた。
「ジョージさん、お連れのご婦人もお美しいですな。ぜひ、紹介願いますよ」昭武が、さも俺と知り合いのように話しかけてきた。
「ううーん、思い出せないんだがいつ知り合ったんだっけ?昭武さんと俺は?招待状を貰ったので、断るのも悪いし、来たら思い出せるかと思ってね、でもどうにも思い出せないんだけど、申し訳ない」
「ふふ、いえいえ。こちらが一方的に存じ上げているだけですよ。改造人間で凄腕の探偵、そして今は魔法使いのジョージさん、私は水戸徳川の十一代当主、徳川昭武です。牛久の大仏が暴走した時には、肝を冷やしましたが、よく止めて頂いて。ほんとにありがとうございました」笑顔で挨拶してくれる。なんとも人の好さそうな笑顔なだけに、どんだけ狸なのか興味が湧いてきた。
「はは、偶々仏像に詳しい者と工作が得意な者が手の者にいましたので、問題なく処理できました。まあ、一人だと危なかったかも知れませんね」
「ほう、今日はお一人でいらっしゃったのですか?あの巨大な大仏を一撃で仕留めた方に、是非お会いしたいものですが?」
「ああ、残念ながら留守番していますよ。世間体というものがありますからね。公共の物品を無暗に破壊したとかで、謹慎ちゅうです」まあ、頼りになるガイドさんがいるから、俺的には心配はないけどね。
「おお、なるほど。マスコミが五月蠅いですからね。力を持つものには、市民に対する責任があるとか、なんとか。無駄な税金使うなとかね。私に言わせると、どっちがだと言いたいところですが」
「ところで、今日は何の調査ですか?ざっくばらんに仰ってくだされば協力できるかも知れませんよ」昭武さんが、にっこり笑う。
「ずばっと、言うと天下の転覆を企てる者がいるとか。それも、古の副将軍を蘇らせるとか?」ちょっと、ストレート過ぎよジョージ君てばっ。
「はは、ご先祖さまですか。できればお会いしたいですが、いくらなんでも無理でしょう」
サクッと終われず、続く・・・