36 大仏
襲撃者のリーダーと思しきメタルフレームが自害したため、俺たちは黒幕が誰だか知る術を失った。
「まあ、手掛かりが無いなら、作ればいいか?じゃあ、散歩にでも行くか」
「わー「ほう、むー、綺麗ね」下僕たちが歓声を上げる。俺たちは、日本三名園に数えられる偕楽園に来ていた。表門から入って好文亭までをゆっくりと南に進む道中で竹林や色とりどりの紫陽花が見られた。
「この偕楽園は、水戸9代当主徳川斉昭が開いたとされているわ。ここ好文亭は大昔の中国にいた武帝の故事から名付けられたそうよ。三階からの景色はなかなかのものだそうよ、行ってみましょう」今日もガイドモードの茶阿さんは、茶色のスーツで解説してくれた。
俺たちが三階から千波湖を眺めていると、ずしーん、どしーんと大きな音が響いてくる。なんか前にもこんことがあったような、既視感が半端ないんだけど。
どがーん、人工の大きな手が屋根を突き破って俺たちの横を掠めて床までめり込む。ああーまたかい。
「アスラ相手してやれよ。仏像どうし仲良くな」俺は、壁を何回か蹴りあがるようにして落下速度を落としながら地上に飛び降りた。皆も無事に降りられたようだ。
地上から眺めると、とんでもなくデカい、奈良の大仏が手に乗りそうだけど。
「大きさから見て、牛久にある大仏像みたいね。だとしたら、高さ100メートルよ。本当に奈良の大仏が手のひらに乗るサイズね」
「おーい、こんなのと一緒にするな、年季が違うんだよ。そりゃっ」アスラが飛び上がると大仏の足にキックを見舞い、吼えた。大仏の外板は意外と薄いのか凹んでいたが、ほとんど効いていないようだ。
「アスラ、弥勒が言っていた仏陀とは違うよな、この大仏は?」
「へん、紛い物の力しか感じられぬ、とても長い年月を生きた仏とは思えぬ。故にお師匠様のいつも言ってるブッちゃんとは到底考えられん!」なるほど、じゃあ破壊しても構わんン訳だな。
「よし、ティーガー砲撃用意!」俺は、ティーガーにキングタイガー(戦車)への移行を指示した。
「マスター、う、了解!」ティーガーは一瞬躊躇したが、逡巡を振り払ってキングタイガーに移行した。
「ティーガー、頭部に照準、てえー!」キングタイガーから砲弾が三発頭部へ向けて発射された。
どがーん、どが、どがーん。大仏の頭部は吹き飛び、ゆっくりと崩れ落ちていく。
「大仏の活動停止を確認、被害なしね。」茶阿さんが冷静に戦況を報告してくれた。
「しかし、何だったんだ。」俺は、訝しんだ。
「ご主人様、さっき大仏からこんなものが」テスタが、黒い封筒を差し出した。受け取って中身を確認すると明日水戸城で開催されるパーティーの招待状だった。