35 自白
2017.1.22 誤字修正
予想以上に、アスラが上手くチンピラを処理したので特に騒がれず尋問に取り掛かれた。別に後れを取るとかの心配じゃなく、尋問する前に殺してしまうとか、派手な爆発で周囲の人間の注目を惹くかも知れないとの危惧だった。いずれにしろ、どういう戦い方をするか見る必要があったので実地にやらせたら見事な手際だった。
さて、チンピラの中で一人だけ毛色が違った奴がいたのでそいつを尋問することにした。メタルフレームの眼鏡を掛け、他の奴らが黒のサングラスと安物のジャケットだったのに、こいつだけ上等のスーツを着て後ろから指示していた。
「後学のために、茶阿さんに手本を見せて欲しいのですが。」俺は、茶阿さんに振ってみた。
「ふふ、高くつくかも知れないわよ」茶阿さんは微笑んでいたが目が笑っていなかった。俺は、マントの内ポケットに仕舞ってあった秀吉さんから貰ったブラックカードに魔力を通してから、黙って見せた。俺も含めて周囲の者の心に「御免」の文字が浮かび上がる。
「うっ、それは『勝手御免』の免状。それを出されては、やるしかないようね。ジョージ君できればこれっきりにして頂戴!」茶阿さんは、スマフォで何やら連絡を取ると少し離れた所にある商工会議所に俺たちを案内した。出迎えた商工会議所の係りの者が、俺たちを大きな応接室に案内した。ドアを閉めると外の音が掻き消えたので防音室のようだ。
「ここなら、水戸徳川も手出しが出来ないわ。何しろ、表の商業は全て大阪が抑えているのよ。さすがに裏の家業はいろいろ有るけどね。覚えておいて、何か助けが要るようならその街の商工会議所に言えば便宜を図ってくれるわ。役所じゃだめよ、手続きに時間が掛かりすぎるし、無駄なお金が必要になるから」
「なるほど、勉強になるなあ」
「じゃあ、そいつをこっちに頂戴、アスラちゃん」抵抗できないように動きを封じていたメタルフレームの男をアスラは引き渡した。
「さーて、まずは誰に頼まれたの」茶阿さんが、しな垂れかかって甘い声で囁く、けれどメタルフレームは身動き一つできない。
「知らねえよ、よそ者がハクイ姉ちゃん連れてチャラチャラしてたんでムカついただけだよ」そんなことで、拳銃まで持ち出されちゃあ、命が幾つあっても足りないよな。
「もう、意地っ張りねー。ちょっと惚れそうかも、早く喋ってベッドのある部屋に行きましょう。誰に頼まれたのー、ふぅー」ますます、甘い声になる茶阿さん、メタルフレームの弱点を太ももを摩ったり耳に息を吹き掛けえる。
「うー、しょ、しょうせ、うっぐ」メタルフレームの男は、血を吐いて息絶えた。
茶阿さんが、男の口元を覗き込む。アーモンドの香りが漂う。
「ジョージ君、御免なさい。奥歯に青酸カプセルが仕込んであったわ。自白しそうになると自分で嚙み潰すように暗示が掛けられていたようね」
相手の覚悟は本物のようだ、あとは当たって見るしかないか?
まだ、相手の正体が不明のままですね。