34 水戸徳川
2017.7.2 誤字修正
俺たちは、朝食をとり終えるとホテルを出て、水戸徳川の居城である水戸城を少し離れた場所から眺めている。水戸城は、防衛の必要性が薄いためか大阪城に城郭のような石垣がなく、土塁や空堀で構成されていた。
「ところで、さっきから監視されているが、どうするんだったっけ。もう少し様子みるかい?」
さりげなく写真を撮るふりをしながら、茶阿さんに意見を聞いてみる。
「先制攻撃あるのみ!」
ティーガーが割り込んで主張してくる。なんか、一生懸命なのが可愛い。テスタは澄まして黙っている。
「ふん、いつでも掛かって来るが良い」
アスラは余裕の待ちというか後の先主義か。
「まあ、雑魚みたいだからもう少し様子を見ましょう」
俺たちは、茶阿さんの意見に黙って従う。
「だったら、この辺で水戸徳川についてレクチャーしてくれませんか?」
相手の出方を待つ間に情報を仕入れる一石二鳥の提案だ。
「そうね、徳川の水戸派については何か知っていることは、ジョージ君?」
茶阿さんが見えない眼鏡をくいっと上げてから、講師モードで質問してきた。
「たしか、クローンで話題の徳川光圀は水戸派二代目当主で、徳川宗家の家康の孫でしたよね。そう言えば、ラーメンとか餃子を日本で初めて食べたとかテレビで言ってたかなあ」
「うーん、ラーメンと餃子は確たる証拠が有る訳でなく諸説あるからこの際置いておいて、前半の部分は正解ね。あと有名どころは、水戸派九代当主の斉昭ね弘道館という立派な学校を作ったらしいわ」
「おうおう、見ねー顔だな。女連れでチャラチャラしやがって、目障りなんだよ!」
「ふ、ホント笑える程、三下の登場だな。展開が早くていいけどね」
五、六人のチンピラが刀とかナイフとか拳銃を構えてこちらを威嚇する。
「アスラ、頼む。殺すなよ」
アスラが俺の指示に応えた。緑の髪が揺れながら、場所を移るたびにチンピラは得物をはたき落とされ、倒されていく。瞬く間にチンピラ達は全員行動不能になり、呻いていた。
「アスラ、よくやった。さてと、何か話すことはあるかな?」
俺は、チンピラの中で一番の兄貴分に目を向けた。