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31 阿修羅

2016.12.31 誤字修正しました。

2017.5.28 誤字修正

 「そうじゃな、おーい!こっちへ来い」弥勒が空間を切り裂いて遠くへ呼びかけた。こちらから覗くと鍵裂きの隙間から赤茶けた大地に薄っすらと氷が張った世界が見える。大地には六本の太刀が刺さっており、夜空にはこちらよりも、かなり大きな青い月が見えた。

 「はい、お師匠様。阿修羅参上」三面六臂さんめんろっぴの阿修羅像が空間の裂け目から出てくると弥勒の前に膝をつく。

 「こちらの者が、日本ひのもとでお主の世話をしてくれる改造人間だ。言うことをよく聞くのじゃぞ」弥勒が説明するが、胡乱気うろんげな目で俺を見やる阿修羅像、迫力があるな。

 「お師匠様のお言葉ですが、こんな弱そうな奴の指図は聞けません。私の伴に就くというのであれば我慢しますが」


「と申して居るが、改造人間!力を見せてやれ。お互い気の済むまで殺り合うしかあるまい」

「元改造人間で、今は魔法使いですよ。仕方ない、仏像殴る趣味はないが今後の為だ。阿修羅とやらの力を見てやろう。」怒りの面を俺に向け、阿修羅は赤い大地から召喚した六本の太刀をそれぞれの手に掴む。


「不遜な人間め、戦いの鬼阿修羅に叶うと思うたか」

「ふ、やればわかること。それとも口先だけか」俺は、少し挑発してみた。

「ふふ、命が要らぬらしい。もう後悔しても遅い!」左右から凄まじい勢いで太刀が俺の周りを通り過ぎていく。まあ、あんまり暴れまわられると周囲に被害が出るかも知れないしなあ。とりあえず皆から離れる方向でかわしていく。


「そりゃ、そりゃ、逃げてるだけじゃ勝てないぞ。小童!」阿修羅は、六本の太刀を目にも止まらぬ速さで振り抜いていく。所々、庭の木々が切り刻まれている。環境破壊を止めないとな。

 ガキンっ、ずばっ、ガキン。

「なんと、俺の太刀が折られるとは。い、一体なにが」

「大方、バーゲンセールの安物を掴まされたんじゃないの」邪魔な太刀を二本折っただけで、なぜか阿修羅が動揺している。大切な剣なのか、まさか形見とかなら悪いことしたなあ。


「とりあえず、地獄の業火よ、燃やし尽くせ!」阿修羅の周りを炎で埋め尽くしてやった。

「ふん、火の化身と言われた我に、その程度の炎など生温いわ!」阿修羅が、一番上の左右の太刀で風を送ると炎はかき消されてしまった。なるほど、相性の問題か。


「ヘルの魂よ、荒ぶるニブルヘルムの風よ嵐と成せ!」ほぼ絶対零度の嵐が、阿修羅の周りを吹き荒れる。空気中の水蒸気が凍り付きキラキラと輝く、ダイヤモンドダストだ。

「ふう、火照った身体に心地良いくらいだな。こっちも行くぞ!」四本の太刀と二つの拳が俺の周りを駆け巡る。一発拳が腹に命中するところだったが、漆黒のマントで凌いだ。やっぱ、極大魔法を撃つしかないか?魔法の才能がないのがこんなにも憂鬱とは。


 ガキン、ガキ、ボキ、ガキン。ふう、残りの太刀も全て折ってやった。

「うっ、しまった。油断したか」俺は、二本の腕に絡みつかれてしまった。

「ようやく、捕まえたぞ!愛用の太刀を全て失うとは思わなかったがな」残り四本の腕が俺の四肢を拘束する。俺の全身を阿修羅の腕が握り潰しにきた。


「ご主人様、「マスター、「ジョージ君!」二人の下僕と茶阿さんが同時に叫んだ。


「ふっ、そろそろ降参するんだな。腕の一本ぐらいは貰うがな」

「なんで、魔法の威力が足りないんだよ。ブラックホールでも出すか、くそーっ。うりゃー、うりゃっ」俺は八つ当たり気味に阿修羅の六本の腕を引っこ抜いた。


「うぬー、なんて馬鹿力じゃ。この責任は、いつかとって貰うんだから。覚えてなさいよ!」

「ほっほ、これで阿修羅も、その方の力を思い知ったのう」

「ふう、何とかなったな。それにしても俺の魔法って、役立たずだ」俺は、盛大に落ち込んだ。


「うう、う」千切れた六本の腕が阿修羅に集まっていき、緑色に輝きだした。やがて、そこには緑の髪の小柄な少女が蹲っていた。



 新下僕の誕生ですね。

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