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27 徳子3

 「どうと、言われてものう。ともかく、私の話などつまらないぞ。聞いてからガッカリするのは無しだぞ!」それでも、俺がせがむとポツポツと徳子は話し出した。


 「私は、先も言うたとおり吉宗さまの孫、世も世なら紀州徳川家の姫じゃ。父様は名も残らぬ柳生の当主よ。先にそなたのガイドが申したとおり、道場剣術に毛が生えた程度、人を斬る役にも立たぬ護身の剣よ」寂しそうに笑う。

 「姫様なら、いいじゃないか身を守れりゃ上等だ!」思わず、語気も強めに柳生の剣とやらを擁護しちまった。


 「そなたは、やさしいのう。じゃが父は折しとき、己の命を救うた女忍者(くのいちを手込めにし、そこらの草花のように捨てたのじゃ。そのときの子供が私」うつむく顔が悔しさに歪む、俺は、そっと肩に手を置いた。


 ふふ、「悪く無いのう、そばに人の温もりを感じるのは。」

 「そういや、人手が足りないだろう。この広い神社に弥八さんと二人じゃ?」

 「そうじゃの、そなたが罪滅ぼしにここを手伝ってくれぬか」じーと俺を見る目が結構本気っぽい。

 「はは、冗談じゃ。伊賀の研究所に頼めば、半月で黒服を頼めるからな。これは秘密だぞ、やつらは弥八のクローンでな、術こそ使えぬがそこそこ役に立つからな、数もすぐ揃うしな」あいつら、みんなクローンだったのか。この世界の科学とやらは、かなり凄いのかなぁ?


 「母様はなあ、どんな技でも一度見ると己の物にできるのじゃった。だから、もっと強い例えばのう、一刀流の小野次郎右衛門忠明じろうえもんただあきの技を授けてくれていたら、私も剣で一角の者になれたかも知れぬのに。柳生の剣など比ぶるものもないのう。なのに、母様はそんな、しょぼい剣を私に授けた。」徳子は、うつむいて口を閉じた。


 「まあ、お前の母さんは、きっと好きだったんだよ。だからその人の剣をお前に残したんだ」また、余計なことを言っちまったかなあ。ふっ、徳子が顔を上げてテンションをわざとらしく上げた。

 「それよりも、吉宗様の毒術の話の方が面白いぞ。毒といっても無味無臭で、殺した相手に殺されたことが判らぬのでは、とまで言われている。それもただ飲み物に混ぜるとかだけじゃないぞ。いつだったか戦い(いくさでは霧状にして敵の兵数千人をあっという間にのう倒せるのじゃ。凄いじゃろう、私もいつか」ぐっと拳を握りしめた。


 「ところで、チラっと見えたけど、そなたの従者のペンダントは綺麗だのう。緑のエメラルドとその中に浮かぶ赤い車、時折その赤い車が神秘的に煌めき、運命にあらがう魂の在り様を示すかのよう」うっ、そこまで判るのか、やはり徳子は特別か?


 「徳子の感覚は鋭く正しいな、少し前、俺たちと弥八のクローンが争った。そのとき、テスタは俺を庇って死んだ、その魂が示す姿を俺がエメラルドの結晶に封じ込めたんだ。それをティーガーに託した」俺は、徳子にテスタのことを話した、今判ったけど心の底で誰かに聞いて欲しかったんだな。


 「もしかしたら、その従者を蘇らせることができるかも知れぬのう。あの力が有ればのう」

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