18 残党
結局京都御所には、リニアモーターカーと従来線を利用して、予定時刻より少し遅れて到着した。と言っても中に入った訳ではなく少し離れたところにある、茶店から眺めているところだ。
御所は、政治経済的には、特別重要ではないが文化遺産としては価値があるため、それなりの警備はされている。
「ジョージ君、聞いてる?じゃあ、大阪と京都の関係は一体どうなっていますか、答えてちょうだい!」茶系統のスーツを着用し小道具のだて眼鏡をくいっとあげて、加藤茶阿は俺に問題を提示した。
テスタは、真剣にノートをとっていた。対照的にティーガーは、壁に写し出された外の風景を興味なさそうに眺めていた。
俺も少し、ぼんやりしていたのでさっき偶々流し読みした歴史の本を思い出しながら、しゃべった。
千六百年、敵国の新爆弾の影響で再び日本に戻った秀吉さんは「人垂らし」と呼ばれた才能を発揮して、裏切るはずだった武将を思い止まらせ、逆に徳川方の武将を寝返らせたりして天下分け目の大戦争に勝利した。
負けた、徳川家康は秀吉さんに忠誠を誓って、領地を変えられ、減らされたりしながら生き延びたが、その子孫は社会の変化についていけず、およそ百年前からは京都に住み着き、神社仏閣などの庭掃除を生業としていた。
「そう、かつては天下に手を掛けた一族の残りかす、『お庭番』と蔑む者も居る。彼らにしたら政権側の我々、大阪には思うところがあるでしょう。そこで、京の公卿衆と手を結び何事か企んでいるかも知れないのよ」
そこを探るだけのはずが、「油断、だったか」
「そうね、残念だったね」相変わらずの茶色いスーツで極めた美人さんが俺たちの前に座った。