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14 整備

 コーヒー好きですか、私は好きです。

 2017.627 誤字修正

 なんか、調子が出ない、アイドリングのときも酷いものだ。風がマトわり付くようで、スピードが乗らない。

 「おい、なんか音がズレてないか?さっきから辛気臭い音させやがって、こんなんじゃ京都までは持たないんじゃないか」


 俺は、秀吉さんから話を聞いて、この世界が1600年から分岐した世界だと知った。秀吉さんが歴史を変える前の世界では、関ケ原で勝利を収めた徳川家康が本拠地の穢土エドに幕府を開き、その後日本を二百六十年の間支配した。そして、長く続いた鎖国政策が外国との国力の差となってしまった。

 この遅れを取り戻すため、無理な富国強兵策を執った日本は、世界から孤立し、世界を二分する戦争イクサに振り回され、敵国の新型爆弾で広島が未曽有の被害を被る羽目になってしまった。


 秀吉さんは、残留思念としてだが、現場で新型爆弾の威力を目撃したため、死に物狂いで関ケ原の戦いを逆転勝利し、平和に惰眠をムサボることなく今日まで日本ヒノモトの舵取りを行ってきた。

 だから、俺の存在に早くから気づけたのだそうだ。人一倍、日本を愛する秀吉さんだから、もし俺が京都にいる徳川の残党が送り込んだ破壊兵器なら、刺し違えてでも俺を殺すつもりだったと笑顔で告げたのだ。


「マスター、テスタが病気ならお医者さんに診せなきゃ。城に行けば、きっと診てくれるよ、秀吉様はいい人だから。城の守りが手薄になるのに、私がマスターの所に行きたいと言ったとき笑顔で送り出してくれた、だから!」

 助手席に収まるプラチナブロンドの少女が心配そうに青い左目を伏せた、右目は本人が意識していなくても常に監視しているぞばかりに冷たく銀色に輝いている。


「ティーガー、心配掛けちまったな。でも、なんか昨日の話を聞くとさあ。秀吉の殿様には世話になりたくないんだよ、あたしは。信用できないって訳じゃないんだ、でも、なんか隠している気がするんだ。ご主人様、ちょうど近くに知り合いがいるのを思い出したよ。そこなら、あたしを診てくれるよ」


 首都高(大阪環状道路)を降りて、5分程走るとコーヒーショップが見えてきた。駐車場に停車すると俺たちが降りるのも待たずに、テスタは赤いドレスをマトって木製のドアを開けた。

「いらっしゃい、なんだお前か。ずいぶん久しいな、一月振りかな」ベレー帽を被り、パイプをくわえた40代の男が出迎えた。

「そんなに、なるかな。やっぱ調子悪くなるのも当たり前かあ」

「もっと、ちょくちょく来い、うまいコーヒーも飲ませてやるから」ベレー帽の男は、テスタの前にコーヒーを置いた。


「ふっ、まずいコーヒー飲みにそんなちょくちょく来れないね」

「いらっしゃい、この子の連れかい」

「ああ、紹介するよ、この人はあたしのご主人様で、この娘はあたしの友達さ。で、こっちは今じゃこんなチンケな茶店をやっているけど昔は凄腕のメカニックでちょいちょいあたしも診てくれてたのさ」


「な、何ー!いつの間に結婚したんだ、花嫁姿は俺に見せろといつも言ってただろ。それとコーヒーショップに誇りを持っているんだ、チンケな店は余計だ!」

「なに、阿呆なこと言ってるんだか、この人はただのご主人様で、結婚なんてする(できる)わけないじゃない。阿呆なこと言ってないで、表に出てあたしを診てよ」テスタは、少しほほを赤らめながら速足で駐車場に出た。


 ベレー帽の男は、後ろのエンジンカウルを開くとアクセルを何度か吹かすとテスタロッサから降りた。「わかった、もういいぞ」

「もう、なんだか恥ずかしいわね、ご主人様の前で他人に裸をさらすのは」

「原因は、燃調のセッティングがずれているのと、電気系統のコードが何本か溶け掛かっていたぞ。何、無茶しているんだか?」

 テスタが、あーあの時のとつぶやいていた。 

   

「来週、京都に行くんだが。治りそうか?」

「ちょっと、部品が手に入りにくいんで、割高になるが払えるのか?」

 俺は、ポケットから何も表記されていない真っ黒なカードを出して男に渡たすときに、少し魔力を込めた。

「これは、ブラックカード。勝手御免かあ、なんでもありだな。どこで手に入れたんだ?」

「城で、秀吉という男に貰った」

「そうか、太閤さんか、わかった。3日くれ、ベストの状態にしてやる。俺は館盾造ヤカタジュンゾウ、あんたは?」

「俺は、ジョージだ」

「おやっさんのこと、誰も盾造なんて呼ばないわ、ねえ、タッチー!」

「タッチーって言うなあ!」



   


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