13 日本(ヒノモト)
年寄りの話、長
2016年12月10日 誤字 修正しました。
「よう、来てくれたのう。まあ、遠慮せずに座りなさい」俺たちは、高そうな輪島塗のテーブルに着いた。茶阿さんが、用事があるのでと言って部屋から出るのと入れ違いに着物を来た女中さんがコーヒーと美味しそうなお菓子を置いて静かに出ていった。
俺たちの正面の壁が、城外の風景を写し出すと、秀吉さんは語り出した。
「今日は、この国の日本について知ってもらいたいと思ってのう。この国は、美しいのう」
「四百年程前、この国を二分する戦闘があった。その二年前、既にわしはこの世を去り、やきもきしながら戦闘を眺めているだけじゃった」
秀吉さんが語る歴史では、彼亡き後、一番力を持っていた家康が率いる東軍が勝利しその後、今の東京に政治、経済の中心を移し東京が首都となった。
まあ、三成は仕事は出来るが人の情、特に武将の心がわからん奴でのう。で、わしは息子、秀頼のことが気になって色々見ていたが、しょうもない最期じゃったのう」
秀吉さんは、一口コーヒーを飲むとため息をついた。
「え、じゃあ、あんた死んでるのか?」俺は気づかず身を乗り出していた。
「どうなんじゃろうな、まあ、話を聞いてから己判断を下すがよい、のじゃ。それから、三百年に少し足りぬ時間が過ぎ、家康の子孫の栄華が終わり。幾度か、異国とも戦争をしつつこの国も繁栄しておったが、ある時安芸(今で言う、広島)の国で途方もない、力の奔流が、あってのう」
「わしは、目を回してしもうて。気がつくと四百年前の戦場におった。もう、夢中で知恵を絞り家康の裏をかいて、逆に東軍の武将を寝返らせてあの戦闘に勝ってしもうた。それから、何年生きとるのかのう、四百十六かのう。わはは」
俺は、言葉を失った。いつの間にかカップを握りつぶしていたが気にならなかった。幸い上手いコーヒーは飲み終えた後なのでテーブルに飲ませてはいない。
「じゃから、気になるのじゃ。そちの異常な力がなあ」秀吉さんの目が俺を射抜くように鋭くなった。