11 義眼
みんな、私の目は青くキラキラ光って綺麗だと言ってくれる。でも鈍く銀色に光る右目のことは誰も話題にしたがらない。だから、五歳のとき変質者に右目を奪われたとき『わーい、これで銀色の冷たい眼と言われずに済んでホッとした。
十のとき、重力制御の失敗で二番目の右目、義眼としては始めてのデバイスを失ったときは、悲しかった。とても的を狙いやすかったから、制御デバイスとして使いやすかったから。
だから再び、磨きあげられた銀色の義眼が私の眼窩に収まったときは凄く嬉しかった。
テスタから降りると、俺は手近な門へ向かった。「賞品って何だろうね」隣には、テスタが侍る。
門の前には、茶色のドット柄スーツを着た女性が隙のない姿で佇み、微笑みと共に出迎えてくれた。
「よく来てくれたわね、こっちよどうぞ」
漆塗りの豪華な駕籠が音もなく現れた。駕籠に揺られること、数分で俺たちは黄金の屏風に囲まれた茶室に通された。振り返ると、いつの間にか、駕籠は消えていた。
「お連れしました」
「ご苦労じゃったな、茶阿。余が秀吉じゃ。苦しゅうない、近こう寄れ」
「遠慮しておきます、こんな狭いところじゃ、男同士で抱き合うような趣味は俺は持たぬ!ま、挨拶がまだでしたな俺は、ジョージ。ただのジョージで、決して名字が只野ではない。あ、こいつはテスタ、まあ使い魔だ」
「ふっ、城中の癖でのう、気にするでない」
「今回のそちの試合見事であった。儂に仕える気はないかのう」
「有りません!」「禄高は如何様にも、ん、何、そうか欲がないのう」
「では、これをそちに渡しておこう」
俺は、真黒なカードを秀吉さんから受け取った、裏も表も真っ黒。カードを改めるため軽く魔力を当ててみると何故か、『御免』という文字が心に浮かび上がる。とりあえず、両面黒のカードをポケットにしまった。
「大事にせいよ、日本と同盟関係にある国では好き勝手できる勝手免状だからのう。なに、遠慮は要らぬこの間のイベントは亡き主」信長様の誕生日で、とんでもないことを仕出かしたものには褒美を取らせることにしておる。最近は滅多にないがの、十五年振り位かも知れぬ」
「はい、先ほど記録を調べたところ十六年ぶりの快挙です。マスター、私をお連れください。お役にたって見せます」
いつの間にか、俺の前に、輝くプラチナブロンドが肩まで伸び、綺麗な青い眼が切なそうに俺を見つめている。銀色の義眼の少女が現れた。
「この娘を持っていくと良い。なかなか、役に立つぞ!身代わりでも、夜伽でも、それこそ呪術の生け贄でもな」
俺は、立ち上がり出て行くため背を向けた「俺には必要ない!ほな秀吉さん、さいなら」
「マスター、お連れください。うっ、私には、マスターしか」
少女は深々と頭を下げた、身体は小刻みに震えプラチナの滝が波打つ。
「名は何という?」振り向かずに俺は問うた。
「ティーガー、え?」
「行くぞ、ティーガー案内せい!」
「はい、マスター」俺の前に駆け出すティーガーの右眼から涙が零れた。そこには鈍く輝く銀色の義眼が収まっていたが、それはテスタにしか見えなかった。
仲間?が増えた。