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10 決着

 真打ち、登場

 さてと、腹ごしらえもしたことだし。行くか。俺は、漆黒のマントをなびかせリングへ続く花道を駆け上がっていく。

「ただいまから、最終戦を開始します。挑戦者、只野ぉージョージぃー!」がく、俺が花道を盛大に踏み外す音が会場に木霊した。

「そして迎え撃つのは、王者、タイガーぁーツゥー!」


くそう、最初から色物になってしまった。

 「解説の林さん、この戦いどう御覧になられますか」

 「そうですねぇー、チャンピオンの強さは抜群ですからねえ、砲弾を避けられたら勝機があるかも知れません。何しろ、凄まじい強さを目にしてさえ棄権しなかった挑戦者、只野、秘策があると私は見ています」

 く、さっき係りの人にジョージさんの名前、二つ名?とかリングネームとかペンネームとかあるのかと聞かれて「ただのジョージだ」と返したら、間違えやがって。 


 カーン、「さあ、遂に運命のゴングが鳴り響きました。試合行方は、勝利の女神はどちらに微笑むのか?」

 うん、何か今までの試合とは違う?得体の知れない恐怖が、私に本気のトリガーを引かせた!

 ドガーン、耳を弄する爆発音が会場に木霊する。ドガーン、ドガーン、立ち込める硝煙の香り。


 「これは、決まったかチャンピオンの十八番トリプルカノン、只野選手の肉片を回収できるか、心配です」

 「ジョージっ!」、「ひっ、ご主人様ー」

 「いいえ、茶阿さん。大丈夫です、ご主人様は無事です。使い魔の私がこの姿を維持できているということが、その証拠です!」


 う、凄まじい衝撃が俺の身体を震わせる、ドガーン、ドガーン、ドガーン遅れて爆発音が耳をつんざく。しかし、あの戦車大砲で三点バーストとかどんだけだよ。

 俺は、砲弾から守ってくれた漆黒のマントを外すとタイガーⅡとの間合いを一気に詰めた。

 「なんと、只野選手は無事でした、そして果敢に反撃に出たぁ!」


 「ジョージ君、無事で、うっ」、「いっケー!ご主人様ぁー」

 まずは、大砲をなんとかしないとなあ。俺は、マントで砲筒の射出穴を塞ぐと

しっかりと結んでやった。

 う、ちょこまかと蠅のように、7.92mm機銃の餌にしてあげましょう。タ、タタタ、本当に逃げるのが上手いわね。

 

 機関銃まで撃てるのか、こうなりゃ「其は、極点の凍てつく大地、アイスキャンディ!」

 「機銃が、うっ、キャタピラも凍りついて動かない。液体ヘリウムでも隠し持っていたというのか?」

 「う、うおー、りゃー」、俺は、タイガーⅡの砲筒をつかむと渾身の力で(ヒネリ)あげた。

 ゴットン、シュウー。「うわー、動け!う、うごけ、動けない。こんな、はずでは。私はドイツとこの国の科学技術をつぎ込んだ、言わば両国のエース...なぜ、私は負けた、負けた、あの男の方が私より強いのか、いや、強すぎる!」


カンカンカーン、「遂に、決着、勝利を手にしたのは挑戦者の只野ジョージ!いやあ、大変のことになりましたね、解説の林さん」

 「はい、あの防弾チョッキ、いえ防弾マントや一瞬にして機銃とキャタピラを凍りつかせた手際、奇跡の魔術師が彗星のように現れたというところですかね。次回のイベントも見逃せません、はい、これ本当」

 「イエー!」、「イエス!」控え室で、テスタと茶阿がハイタッチを決めていた。

 

 「では、三日後にまた来てくださいね、ジョージさん。大会会長からお言葉と賞品が頂けますからね。絶対ですよ!」

 「まあ、もらえる物なら頂きに来るよ」、「また、お茶しようね茶阿さんっ!

「お前ら、いつの間に仲良しになってるんだ」、「ね。」、「ねぇー」

 ふっ、敵わないなあ。


 俺たちが、いや会場に居た誰もが、その存在を忘れた頃、一滴の冷却液がリングにこぼれ落ちた、それは、もしかしたら涙だったのかも知れない。

 リングから、静かに降りる者がいた。もし、誰かがリングに目を向けていれば首を傾げていただろう、試合終了後からずっと横たわっていた戦車が何処にも無いことに。

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