9 イベント
2017.1.1 章管理導入に伴い改稿
ふう、今日も十二気筒サウンドはいい感じ、あの日も絶好調だったけど、ご主人様には敵わなかったなあ。この人は、きっと常識では測れないんだわ。
「あと、一分で着くわよ。ご主人様」
不思議ね、前はカーナビの情報なんか知るよしもなかったのに、やはりあの日から私は生まれ変わったのね。時速二八〇キロで走りながら、でも、嫌じゃない私がいた。ご主人様様がうなずくのが、わずかなGセンサの揺らぎでわかり何だか嬉しかった。
「いいなあ、赤いテスタロッサ。あれ、どこへ行ったんだ?さっき、テスタロッサがいたんやけど、いつの間にかおらへんねん!」
「おい、何言うてんの。テスタロッサなんか、いいへんで。それよりあの赤いドレスの女、そそるでー!」
「おかしいなあ、けど、ほんまに、ええ女やわあ。」若者達が騒いでいるが、いつものことで気にならない。
俺は、テスタロッサから人形態に変化した下僕と腕を組みイベント会場へと進んだ。せこい話だが、駐車料金とか、出入りに時間を取られないで助かる。
しかし、混んでるなあ。
「はーい、ジョージくーん!」
声のした方をみると、濃いめの茶色スーツを着た女性がぶんぶんと音がするほどの勢いで両腕を振っていた。
「はい、こっちが選手控え室で、これがゼッケンね。いいわねぇ、これ私のラッキーナンバーよ」
「ありがとう、茶阿さん。テスタも入っていいのかな。この人混みではぐれると大変なんだけど」
「ええ、さっき役員の人に聞いといたわ。問題ないそうよ」
ゼッケンを見ると、七番だった。「ただいまから、第一試合を開始します。挑戦者、本多忠勝 迎え撃つはチャンピオン、タイガーⅡ」
おいおい、騎馬武者と戦車って何の試合だよ。
「ジョージ君も、良く見ててねチャンピオンの強さを!」
騎馬武者は、猛烈な勢いで戦車に向かっていく。やりの先が赤く光っている、どうやら赤熱しているようだ。
ドガーン、ドボーン!
「リングに残ったのは、チャンピオンだ!惜しかったですね、さあ、次の挑戦者は、灯台ロボット研究所、その名もザ、ロボット!第二試合 開始!」
ふう、戦車にロボットか、やっとまともになったのかな。一息つくか、俺は茶阿が淹れてくれたコーヒーを一口飲んだ、その瞬間、勝負が決まった。
「おー、流石はチャンピオン、キングタイガーはだてじゃない!砲弾一発でザ ロボットを仕留めました。」
「来場の皆様、リングの清掃作業のため試合再開は、三〇分後とします。その間にお弁当などお買い求めください。名物、大阪城弁当を始め、食い倒れ弁当など各種取り揃えております。協賛は、越後屋でした」
お、何か旨そうな弁当だな、俺も食いたいかも。
「あ、ジョージ君、その様子じゃ聞いてないわね?」
「え、何のこと」
「スポンサーの越後屋さんから、選手には無料で大阪城弁当が配られるわ。じゃなくって、チャンピオンのあまりの強さに残りの挑戦者は皆さん棄権したわ。だから、君が最後の希望よ❗」
何と、そういえば控え室には、俺たちしかいない。食事に行ったのかと思っていたが、確かに荷物もないな。
「まあ、弁当でも食べようか」
「ふっ、やっぱりあなたは、やるのね?天守閣のシャチホコ一つちょうだい。あれ、好きなの」
「俺のこと、応援してくれるならね」
「ええ、もちろんよ」いい、笑顔だ。
「ご主人様、私も応援」テスタが抱きついてきた。
これは、負けられなくなったな。しかし、このシャチホコ旨いなビスケットで形造られた中に名古屋コーチンのボンジリが入って、うまーい。
次回、チャンピオンと勝負!