カロ村はよいところ!
了承したのがわかったのか少女は嬉しそうに二人の男を
揺さぶって起こそうとしている。
あ、そうだ、鑑定スキルとやらを使うか。
目を凝らしてみる、お、でたでた。
ヘレナ
種族:人間
性別:女性
HP:30
攻撃・防御:10
MP:20
魔防:5
魔力:15
スキル:意思疎通レベル2
ヘレナちゃんか、スキルは意思疎通・・・
なになに・・・。
スキル:意思疎通
言葉の通じないモンスターなどの意思表示を読み取ることが
できる。 知識系スキルがあると効果が上昇する。
へー、いいじゃん。
けどステータス低いな、オイ。 この子が普通なのか?
俺二十万あるけど。
私のMPは二十万です・・・とか言えちゃう系か!
一応比較対象として男のほうも見とくか。
クロッゾ
種族:人間
性別:男
HP:50
攻撃:30
防御:28
MP:0
魔防:5
魔力:0
バッドステータス:気絶
こっちも似たり寄ったりだな、男と大人っていう要素で多少
ヘレナっていう少女より高いくらいか。
しかし魔法系のステータスは壊滅的だな。
あとは俺がめんどくさくなって頭からかぶりついたヤツ。
食感をちゃんと感じたからコイツも大丈夫なはずだが。
オリバ
種族:人間
性別:男性
HP:80
攻撃:50
防御:70
MP:10
魔防:10
魔力:15
バッドステータス:気絶・混乱
スキル:剣術レベル1
能力値はこの中で最高か、しかも剣が使えるらしい。
混乱してるのは・・・間違いなく俺のせいだなこれ。
頭からかぶりつかれたら大抵は混乱するだろうし。
しかし気絶しながら混乱か、器用なことするな。
感心しながらステータスを確認しているとヘレナが二人を起こして
くれたようだ。
「う、うーん・・・。」
二人は頭を振って意識を復活させると同時に俺に気付いたのか
驚いて飛びのいた。
「へ、へれにゃ! こいつはなんでここに?!」
「落ち着いてくださいオリバさん、この方は私達に危害を加えたい
わけではないみたいなんです。」
頭から齧られたのがそんなに怖かったのか、ごめんよ。
そんな二人を懸命に説得するヘレナと自分の体の変化に気付いたのか
二人は驚いたように互いの顔を見合わせている。
「ホントに・・・助けてくれるのか?」
「キシッ!」
元気良くうなづいてやると二人の表情もパッと明るくなる。
「わかった、ヘレナとコイツを信じよう!」
「いいのか、クロッゾ、コイツはモンスターだぞ。」
「知るか、どのみち全員分薬は買えない・・・手段なんか選んでられるか!」
クロッゾという男の言葉にオリバは黙り込む。
しかし意を決したように立ち上がると村へ向かうことを
決めたようだ。
「いいか、黒いの。 もしも変なマネしやがったらぶっ殺してやる。」
そう釘をさしてきたが、俺としては問題ない。
俺は三人に連れられてカロ村に向かうことになった。
そして急ぎ足の三人に追随すること2時間。
途中で商人から馬を借りて最寄の宿場まで向かうとそこからまた
4時間近く歩いた。 途中で俺がヘレナを担いで走ったので
スピードが落ちなかったのが功を奏した。
「うっ・・・こりゃひでえ・・・。」
村につくと日は落ちていたがひどい悪臭に三人は鼻を思わず押さえていた。
膿と血、それに死臭が村を覆っていたからだ。
「とりあえず村長に会せよう。」
クロッゾの言葉に二人は頷くとヘレナに案内されて村で一番大きな
建物に向かう。
村は活気というより生気がなく、田畑も荒れている。
働き手どころか村人全員が病に侵されているようだ。
「村長! 村長!」
クロッゾが家のドアを叩く。 しかし返事がない。
もしかすると倒れているかもしれないが・・・。
「キシッ!」
緊急事態の可能性を考慮して俺はヘレナを降ろすとドアをこじ開ける。
蝶番が容易く壊れ、勢いあまって壁にぶつかったが
それどころではない。 病魔の匂いがする!
村に入ったうちからプンプンと匂っていたが限界だ。
俺はクンクンと犬のように嗅ぎながら部屋を探し回ると
ベッドに横たわる婦人を発見。
「キシシッ!」
思わず声が漏れるが婦人はうめくばかりで驚く様子もない。
近づいて顔を覗き込むと、あるある、顔を覆う死の斑点。
症状が軽いのか免疫力の差か、皮膚自体は大丈夫そうだ。
俺は手早く腕をつっこみ、体から黒い球体を引きずり出す。
やはり症状が軽かったのか、玉はクロッゾやオリバのもの
よりずっと小さい。
体から球体が出ると体の斑点は嘘のように消え、肌は瑞々しさ
を取り戻していく。 フーッと息を吹きかけるとそのスピードが
段違いに速くなった。 これが癒しの風の効果か?
球体は美味しくいただいて次を探すか。