表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪食の聖神  作者: ファウスト
8/13

少女と会合

「キャアッ!」


猛然とこちらに向かってくるモンスターは一足飛びに

飛び上がると私を押し倒し、顔を覗き込んできました。


見たことの無いモンスターです。

まるで宝石みたいな顔に怯えて歯を鳴らす私の顔が映っています。

ああ、きっと殺されてしまう・・・。


私が目をそらせないでいるとモンスターは銀色に鈍くかがやく

腕を私の口の中へ突っ込んできました。


「んんっ?!」


びっくりして口を閉じようとしても腕は関係なくするすると

入り込んできます。 不思議と苦しくありません。

体が徐々に軽くなって、ああ、私死ぬんだって・・・

あきらめた瞬間、モンスターは私から腕を引き抜きました。


手には黒い玉のようなものが握られています。


あれは?


モンスターはそれをおいしそうに食べるとゴクリと

飲み込んで、嬉しそうな声をあげます。


「うわっ! た、助けてくれぇ!」


ハッとして視線を移すと今度はオリバさんがモンスターに

食べられそうになっていました。


「や、やめてください・・・。」


言っては見ますが腰が抜けてしまって思うように動けません。

モンスターさんはそんな私を見もせずオリバさんの

頭を丸ごと口の中へ入れてしまいます。


「モガモガモガガガガ!」


「ジュルルル!ゾババババ!」


オリバさんのもがく声といっしょに凄い音でモンスターが

オリバさんを吸っています。 おぞましい光景が

予想でき、モンスターがペッとオリバさんを吐き出した

のを見て這う様にしてようやくたどり着きました。


「オリバさん!」


私はそのときとんでもないものを見てしまいました。


気絶しているであろうオリバさんの顔が

『元通り』になっていたのです。


失礼ですがオリバさんは病のせいで醜く爛れていたはずの

彼の顔は病が流行りはじめる健康な顔にもどっていました。


どういうこと? あのモンスターは私達を食べに

きたわけじゃないのだろうか?


クロッゾさんに対してもモンスターは銀色の腕を

口に突っ込んで黒い玉を引き摺り出し

それをおいしそうに食べる。


そしてスープの残りを舐めるようにクロッゾさんの顔を

舐めると私達がそうなったように健康だったころの

顔や肌に戻っていました。


「ゲップ・・・。」


満足そうにげっぷをしておなかをさするモンスター。

信じがたいことですが・・・もしかして・・・。


「あの・・・。」


私は思い切って声をかけてみることにしました。







「ゲップ・・・。」


あぁ食った食った。 こりゃいくらでもいけるな。

食欲に任せて襲ってしまったが・・・赦せ。

女の子は呆然としているし男にいたっては気絶している。

もとから失神してたヤツもいたが今は呼吸も表情も

安らかだ、問題ないだろう。


人間の姿だったら爪楊枝でシーシーしたい気分だったが

これからどうしたもんか、意外と食欲に弱くなってる気がする。


怪奇!病人を襲うモンスター!とか噂になったら嫌だな。


欲に任せて行動したことを後悔しつつ

腹をさすっていると先ほどの少女がこちらに声をかけてくる。


「あ、あのっ!」


おそるおそるといった風だ。 やっぱり怖かったよな。


「もしかして、助けてくださったんですか?」


血色のよくなった少女はそう尋ねてくる。

そういや最初の男達の顔も傷が治ってるしそう思ってくれるなら

ありがたいが・・・。


「キシッ」


一応頷いておく、とりあえず悪意はないしな。

そんな俺の反応を見て少女は顔をパァッと明るくして

俺に詰め寄ってきた。


「お願いがあります!」


「キシッ?」


そう言うと彼女は俺の手をとってこちらをまっすぐと

見つめてくる。 よわったな。

とりあえず黙って聞いてみることにする。


「私の村・・・カロ村っていうんですけど・・・

 さっきみたいな病気が流行ってて・・・助けてくれませんか?」


やっぱりか、ってことは彼女達は薬の買出しに出かけてたのか。


「お金も大してなくって、お医者さんが見つかるかもわからなくて

 どうしたらいいか・・・。」


いいながら思い出したのか不安そうに手を握る少女。

これは助けない理由はないな。 それに食事にありつけそうだし。

話を聞いて俺が胸を叩いて任せろ!とジェスチャーしてみる。


「いいんですか?」


「キシ!」


うん、と頷いて見せると彼女は再び笑顔を見せてくれた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ