表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪食の聖神  作者: ファウスト
6/13

黒い人って誰のこと?

おっさん騎士に少年を託すとおっさん騎士は少し唸りながらも

頭を下げた。


「すまぬ、どこの者かはしらんが・・・礼は言うぞ。」


「キシィ!」


「それがしの言葉がわかるのか?」


「キシシ!」


「なるほど、疑って悪かったのう。」


いいってことよ。 しかしこの少年はいいとこの育ちらしい。

顔立ちも悪くないし、着てる鎧もどことなく上等なもののような。

それにこのおっさん騎士が大切そうに抱えているのが印象的だ。


「騎士長、そろそろ・・・。」


供回りの騎士がそういうので皆は再び馬にまたがり時折俺を

警戒しながら走り去っていく。

俺はそんな騎士達に手を振るしか出来なかった。


言葉が喋れないのってかなり不便だ・・・。








今日、それがしは珍妙な生物に出会った。

まるで黒い宝石に体と手足が生えたような不思議な生物。


魔物にもあんな珍妙なものはいないだろうが・・・

ドラゴンの中に似たような肌質のモノがいた気もしないでもないが

最初はそれ故に殿下を抱えて歩いているのに気付いた時は

嫌な予感がしたものだ。


しかしあの珍妙な生物は話せないながらもこちらの言葉は理解していたし

殿下をこちらに送ってくれたと見ても間違いじゃないだろう。


将軍の率いる軍が敗走し、殿下の近衛兵が救出の早馬を出したとき

それがしは殿下につけた兵の少なさを後悔した。


とるものもとりあえず現地に駆けつけてみたものの草原は敵と味方の

躯が横たわるばかり、内心殿下の後を追おうかと何度思ったか。


殿下は王位継承権第一位の尊い身分ながら体も弱く、心優しいお方。

荒事に近づけたくなかったがこれも王族の務めと自分を叱咤し

戦場に赴かれた初陣でこれとは・・・。

戦闘そのものに勝利できたものの近衛が全滅したとあっては

将軍は更迭を免れないやもしれん。


しかしあの珍妙な生物のお陰で殿下は無事それがしが保護できた。

不幸中の幸いというヤツだ。

王都に向けて馬を走らせる途中で殿下は目を覚まされた。


「うう、ここは?」


「おお、殿下、気がつかれましたか!」


殿下が眼を開くと部下達も安堵のため息を漏らす。


「クラウス、・・・あの、黒い人は?」


黒い人、おそらくあの珍妙な生物であろう。

気を失っていたと思っていたがおぼろげながら意識があったのだろう。


「あの御仁ならば草原で別れましたが・・・。」


「そう・・・なの、お礼を言えなかった。」


しょんぼりとした殿下に慰める言葉を捜していると殿下の口から

衝撃の事実が飛び出す。


「彼がいなかったら僕は間違いなく死んでいた・・・。」


「どういうことですかな?」


死んでいたとは物騒でござる。


「あのとき僕はたくさん怪我をしていたんだ、血もいっぱいでて・・・。」


「なんと・・・。」


驚いて殿下の体を見てもどこにも怪我などない。 念のため馬をとめて

服の中を改めてみても怪我などどこにもないが・・・。


「あの黒い人が治してくれたんだ、それになんだか体も軽いし。」


治した? 失礼をと断ってから肌をまじまじと見ると微かに傷が塞がった

痕がある、これは回復の魔法を使ったようだが・・・。

それ以上に驚いたのは殿下の肌色が良くなっていることだ。

病気がちの殿下のためにそれがしや近習のものは薬や回復魔法を

習得してきたが殿下の顔つきといい血色もよくなっている。


これはあの珍妙な生物の力を侮っていたかもしれん。

しかしそう思った時には後の祭り。


礼もそこそこに立ち去ったことを殿下に咎められてしまった、とほほ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ