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悪食の聖神  作者: ファウスト
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翌朝

日が昇る前に俺は納屋に潜り込んでゴロリと床に寝そべった。

こうなったら知らん顔するしかない。


どうやら疲労はそれなりに感じるようなので俺は

寝そべったまま眼を閉じた。






「オイ、起きろ!」


「んがっ・・・。」


「おっさんみたいな声しやがって。」


何時間寝ていたのだろう、納屋は薄暗いので時間の感覚が狂って

しまった。  ひどい言われようだが蹴り起こされないだけましか。


体を起こすと俺はいつの間にか納屋のど真ん中で大の字になっていたことに

気付いた。 意外と寝相が悪いんだな俺。

クロッゾはあくびをしながら起き上がった俺を見ながら用件を告げた。


「悪いが畑仕事を手伝ってくれ、畑の野菜が巨大化してて大変なんだよ。 

 それとお前のことはもう皆に話したから気にしないでいいぞ。」


結局俺のことは皆にぶっちゃけたらしい。 まあ、不自然な感じは

拭えなかったし、治療した村人も明らかに怪訝そうな顔してたしな。


しかし説明したからってそんなすぐに俺が受け入れられるものなのか?

おそるおそるクロッゾの後ろをついて歩いていく。

ぷるぷる!ぼくわるいモンスターじゃないよ!


「おーい、件の黒いヤツを連れてきたぞー!」


慎重に行きたいこっちの思惑とは裏腹にクロッゾは大声で

皆に宣伝してくれる。 やめてくれ、プレッシャーがやばい。


病の匂いが掻き消え、かつての村の活気が戻っているらしい。

畑仕事に精を出す若者や洗濯物を干している女性やら

皆が溜まった仕事を片付けるべく忙しく歩き回っている。


畑一つ一つはやや規模が小さいがこの村は食料事情が

それなりによろしい村だったようだ。 家に建てられた倉庫や

荷馬車の数なども多かったので普段は行商も来るのかもしれない。


「ほぇー!これが黒いお方かね!」


俺が近づいてきたのがわかると老人が皆してなにやら俺を拝んでいる。

あれか、お地蔵さん的な。


「村長達から聞いたと思うがこの村の病の元はコイツが、

 いやさ、この御仁が処理してくだすった。」


そういうと今度は割合若い人達も俺を拝み始めた。

すっごい恥ずかしいぞ。 


「それと、おそらくだけどこの畑の原因もアンタだな?」


ギクッ。 やっぱり疑われてた。

半ばやけっぱちでうなずくと今度は歓声が上がった。


「凄い!やはりこの御仁は神様が使わしてくださった神の使いでは?」

「枯れた作物を甦らせるなんてやはりそうじゃ!」

「そうじゃ、そうじゃ。」


地に伏さんばかりに拝んでいる村人達に苦笑しつつも

俺は巨大化した作物の収穫に参加した。

長らく放置されていたにも関わらず畑の作物は例年よりも豊作で

巨大化した野菜などは行商に高値で売れるだろうと喜んでいた。


しかしその一方で病が流行った代償も大きく家主を失ったり

親を亡くした子供達の姿もちらほら見える。


祖父は自分の父親がペリリューに消えた事を思い出しては

その後の大変さを俺に語ってくれていた。

例え崇高な目的があったとして残された家族には明日がある。

生きていかねばならないのだ。


「キシシ。」


俺はクロッゾの服のすそを掴むとクイクイと引っ張り

注目を集めると地面にゴリゴリと字を書く。


『男手や親が亡くなった人達はどうする?』


「それは心配すんな、大体の畑は元々村のモンが協力してやってきた

 共同財産みたいなもんだからな。」


クロッゾの話によると昔から主食の小麦や野菜は大抵村全体で管理し

商品作物などは個人でヒマを見つけて栽培していたらしい。


「それにアンタのお陰で商売に使う作物も収穫に影響ないくらい

 元気になってる。 あれならいつもの時期には収穫できる。」


そう言うとクロッゾは畑で巨大化している植物を指差した。

煙草に使う葉っぽいけど煙草の葉っぱって130センチもあったか?

やばいんじゃないの・・・? まあ、犯人俺だけどさ。

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