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悪食の聖神  作者: ファウスト
10/13

入れ食いだ!

クンクンとさらに匂いを辿る。

婦人は村長の奥さんらしいのでヘレナ達にまかせて

さらに病魔の匂いを辿る。


「キシィ!」


ここだな、台所か?

水の匂いに微かに食事の匂いがする。

伺うように部屋に入ると壮年の男性が倒れている。

苦しそうに呻っている斑点が少し

出来ていたがこれが原因じゃないな。

目のクマと腹を押さえるようにもがいているところを見ると

胃腸を壊しているようだ、おそらくはストレス性腸炎だな。


男性を仰向けにするとこちらも手早く手を突っ込む。

引きずり出すと球体が二つ。 病状で増えるのか。


「ハァ・・・ハァ・・・。」


背中を摩りながら息を吹きかけて治療を促進してやる。

すると男性は驚く元気もなかったのか荒い息のまま

拝むような仕草をした。 とりあえず感謝されてるんだろう。


「村長!」


婦人の世話を任せたのかクロッゾが部屋に入ってきた。

その時に俺が黒い球体を食べるのが見えたのか

若干安心した様子を見せてくれる。


「ハァ・・・ハァ・・・。」


「大丈夫ですか?!」


クロッゾが心配そうに尋ねると幾分かマシになったらしい

男性がゆっくりと頷いた。


「ふぅ・・・助かった、腹が爆発したかと・・・。」


「よかった、元気になったんですね!」


「ああ、どこも全く痛くないし体の斑点も消えている

 これはあの黒いモンスターのお陰かね?」


村長の問いかけに俺は親指を立てて答える。

するとクロッゾは呆れたように言った。


「とりあえず我々を助けてくれるようです。」


「そ、そうかね・・・。」


あれ、どうして呆れられてるんだ?

内心納得いかないが仕方ない。 元気になった村長を囲んで

ヘレナ達は道すがら起こったことを話した。


「なるほど・・・、妻も元気になっているのには驚いたが

 そういうことだったのか・・・。」


三人が体験したこと、そして村長夫妻が体験したことを告げる。


「村長、たしかにコイツは得体の知れないやつですがコイツなら

 全員を助けることができます!」


「ふむ・・・案としてはいいがどう説明したものかな。」


大人三人があれこれと話し合う中、俺はヘレナとの会話を

試みることにした。


「キシィ!」


「えっと・・・?」


ヘレナの意思疎通のスキルのレベルを上げていけばきっと

コミュニケーションが楽になるはずだ。

それを踏まえて声を出してみるが上手くいかない。

声帯が特殊なせいか人間の言葉がはなせないのだ。


そういえば文字はどうだろう。


床板をギギギと音を立てて削ってみる。


「あ、ちょっと!」


突然床を削りだした俺に驚いたのか詰め寄ってくるが

悪いけどちょっと勘弁してくれ。


「あれ・・・これって文字?」


ガリガリギギギと音を立てて床に文字を書いていく。


『私はモンスター、名前はまだない。』


自分のセンスの無さが恨めしいが文言として

読み取ってくれるとうれしいが・・・。


「えっと・・・私はモンスター? 名前もないの?」


前世の名前ならある、だが俺はこの世界で新しく

生きていきたい。 だからあえて名前は出さないようにした。


しかし嬉しいことに文字ならば意思疎通が可能なようだ。


「キシッ!」


「えっと、じゃあ名前がいるんじゃない?」


ヘレナはそう言うといろいろと考えてくれるらしい。

うーん、あれでもないこれでもないといくつか考えている内に

先に考えがまとまったらしい村長たちが部屋に入ってきた。


「これから貴方の力を借りるのだがかまわないかね?」


村長は礼儀正しく話してくれる。 モンスターとはいえ

お世話になるということで遠慮しているのだろう。

まあ、俺がへそを曲げると困るということもあるのだろうが。


俺が首を縦に振ると村長たちはこれから行う方法で

村人の治療を行うらしい。

その方法とは簡単だ。 重傷の患者から優先して村長の

管理する納屋に連れ込み、俺の姿が見えないようにしてから

治療し落ち着いたところで村長が説明して混乱を最小限にする

というもの。


設備も必要ないし、村の男が二人元気になったので村の真ん中に

ある村長の家の納屋が効率がいいそうだ。










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