立場の反転
「…」
寝てたか。またまた変な夢を見たな。
結局葵は出ていってしまった。多分、自分の家に行ったのだろう
俺は追いかけられなかった。
だってあいつの涙なんて久々に見たから
そしてそのまま自分の部屋にこもっていつのまにか寝てるって…かっこわる
…コンコン
「葵!?」
…驚いた、こんなに早く動けたんだな。いつのまにかドアを開けていた
なんだかんだで心配してるのか、俺は。
…まあ家族だしな
「残念、私でした」
「まあ、ですよねー」
まあノックの主は朱莉だったんですけどね。
…かっこわる
「ご飯できたよ」
「…ああ、ありがとう」
とりあえず飯を食おう。話はそれからだ
「…葵ちゃんは?」
「あー、多分家」
「ここにいないよ?」
「じゃなくて、葵の家」
一応ここも葵の家になるんだなそういや。
…まあいろいろめんどうそうだけど兄妹関係うまいことやっていかなきゃ母さんにも親父さんにも迷惑かけちゃうしな。
「翔!!翔いる!?」
そうこんな感じで…ありゃ、母さん?
「…なにかあったの?」
「まあ、いろいろとあったけどいつものように仲直りするから大丈夫だよ」
「葵ちゃん、あっちのお家にもいなかったよ?」
…はい?
「あ、翔!葵ちゃんどこいったか知らない!?」
ものすごい勢いで母さんが上がってきた。
いや、そんなことはどうでもいい
…あいつ何してんだよ
「ねえ翔!聞いてるの!?」
…あー、めんどうだ
「ごめん、ちょっといま兄妹の親交を深める外出をしててさ、ちょっと忘れ物を取りに来ただけなんだ」
「あんた、こんなときにふざけてる場合じゃ…」
「そうだったね、私と一緒に探してたもんね。ご飯の用意してたからあんまり手伝えなかったけど」
ナイス朱莉。まじ天使
「というわけで、いってくるわ!」
「ちょい翔!」
母さんの呼び止める声がした気がするけど。そんなことは関係ない
俺は陸上選手並みの猛ダッシュである場所に向かった。
…俺はなにを勘違いしてたんだ
今まで通りになんて出来るわけないじゃないか
だってあいつは俺の妹になるんだ。
俺が守る側になるんだ