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あの子が鬼畜で外道になったワケ!  作者: キノコ飼育委員
愛:親兄弟のいつくしみあう心。ひろく、人間や生物への思いやりのこと
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渇愛

伯父さんが死んだ。


勇者に負けた。


アヌビスが連れてかれた。


保健所に連れてかれた。



僕は丹生 月光、6歳。


ただいま人生に絶望してます。


大切な人が次々に死にます、消えます。


憎い人がどんどん増えます。


思い出の場所がみるみる減っていきます。


身体には傷ばかりが増えます。


あぁ憎い。


ひたすら憎い。


僕に不都合なヤツはみんな消したい。


でもそんな憎悪もすぐに胸の空腹に吸い込まれて消える。


初めてこの“空腹”を感じた四歳のあの日。


あれから二年。


空腹は酷くなる一方だ。


さらにあの胸の奥を引っ掻くがりがりは酷くはならないけど止まる気配もない。

とくに両親が死んだ日を思い出した時は特に酷い。



酷いと言えば、環境も酷くなっていってる。


環境というか……まわりの人の人間性だろうか。


ヒエラルキーの一番上の男の子はますます権力に固執しだした。

孤児院内だけでなく教会のある丘から降りて町まで勢力を広げ始めた。

それでもまだ足りないらしい。


ヒエラルキーの二番目の女の子は着飾るのが異常に好きだ。

キラキラしたものやキレイなお花、可愛い服、髪飾りを集めたり他の子に集めさせたり、美容体操や服が汚れないようにすることにいつも気を使っている。

それでもさらに美しくなりたいらしい。


ヒエラルキーの三番目の男子は楽をしたいらしい。

仕事はもちろん、移動も食事も悲しいことも楽しいこともやるべきこともやった方がいいことも、酷い時には寝返りはおろか呼吸すら忘れてひたすら眠っている。

それでももっと寝たいって。


ヒエラルキーの四番目の男の子は悲しいらしい。

何がそんなに悲しいかは知らないが、悲しいことが気持ちいいらしい。

その事実も悲しいらしいから鉄壁だ。


ヒエラルキーの一番下の男の子は常にイライラしている。

せっかく下が出来たのに僕が言うことを聞かないから、一番上の男の子が勢力を広げても偉くなれないから、食事が貧相だから、空が青いから腹が立つらしい。

いくら怒れどスッキリしないそうだ。


あの女はますます金に執着しだした。

最近では紙幣を敷いたベッドで眠るくらい。

それでももっともっと欲しいらしい。




……おかしいな?


何でみんなこんなに頭おかしいのかな?


二年前はここまで酷くはなかったのに。


半年経たないうちに少しずつ変になっていった。



あぁでも彼らには共通点があった。



僕が嫌いらしい。



いや、むしろ“排除”したいらしい。


一番上の子は勢力下の子に踏み絵の如く僕をいじめさせる。


二番目の女の子を飾る装飾品のほとんどは僕の母さんの形見だ。


三番目の子は仕事を僕に押しつけて僕のベッドで寝る。夜帰って来てもどかない。


四番目の子は僕を徹底的に避けてる。ここ一週間顔を見ない。


一番下の子はイライラすると必ず僕を殴る。


あの女は暇潰しに電撃魔法を浴びせてくる。




ちなみに、




「うああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!」


今この瞬間も。


唐突に始まった激痛は唐突に終わった。


足から力が抜けて礼拝堂の床に倒れ込む。


誰かが近づいてきて、僕の背中を踏みつける。


「ぐッ!」


結構きつく踏んでる。


冷たい、冷え切った声が降ってきた。


「……アンタさぁ、何で死なないの?」


あの女だ。


「こんだけ酷い目に合わされて、いろんなヤツに嫌われて、味方もいなくて、頼みの綱も途切れて、希望も未来もないのに」


どうして死なないの?


そう、この女が聞いてきたのはこれが初めてじゃない。


週一くらいのペースで聞いてくる。


僕は答えない。


死にたくないし、両親からも『どれだけ絶望しても自殺や犬死にだけはするな』って教えられたからだ。


でも僕は答えない。


答える気にならない。


しばらく黙ってたら女は興味を無くしたのか、鼻を鳴らしてもう一度、今度は思いきり頭を踏みつけてからどこかへ行った。


しばらくしてから僕は立ち上がる。


いつものことだ。


もう慣れた。


理不尽な暴力も、酷い待遇も、何故か向けられる恐怖への眼差しも。


そう、何故か彼らは僕を恐れているらしい。


彼らはどうにか僕と言う恐怖を排除しようと狂ったように攻めてくる。


なぜ?


わからない。


でも興味もない。


だって僕が欲しいのは、僕を満たすのは他者からの恐怖じゃないから。


ふと、上を見る。


大きな十字架に磔にされた人の像が教壇の後ろにある。


あの人は人類が犯す過去から未来までの全ての罪を償って死んだらしい。



愚かなことだ。



そんなことをするから、彼らは安心して僕を痛めつけられる。


祈れば、信じれば罪がチャラになるからだ。


そんなことをするくらいなら、不幸な目にあう人々を少しでも減らしてくれればいいのに。


僕みたいな。



……あぁそう考えたら。



神ですら僕にはくれないのか。



僕を満たす唯一無二のあれを。






愛を。



あぁ愛が欲しい。


この飢えを、渇きを、虚ろを満たしてくれる愛が欲しい!


胸の奥をがりがりと引っ掻くコレを静める愛が欲しい!!



誰か……。




あぁ誰か……。






僕を、愛してください。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






とある朝のニュース。


『……次のニュースです。

昨夜未明、●●市の保健所から大型犬が脱走しました。

この犬は『魔獣化』が進んでおり大変危険です。

見つけたら速やかにその場を離れ警察に通報してください。また●●市は退魔師の派遣を要請しており……』

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