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プロローグ
僕は、恋をした。
初恋だった。
春の陽気に誘われて散歩に出掛けた、月の綺麗な夜。
月光に照らされた桜並木の下で。
老人を伴って現れた少女。
濡れたような艶やかな黒髪。
胴着の下から覗く月の光を反射する白い肌。
柔らかそうな見た目に反して鍛えられた固い拳。
悲鳴と恐怖でぐちゃぐちゃな顔。
そして何より
マウントとって僕を必死で殴り殺そうとする彼女の、その儚いガラス細工のような姿に。
僕は、愛ではなく恋をした。
……これは、僕がかけがえのない仲間を得るまでの話。
そして、これは間違いなく、
愛の、物語だ。