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『うわ、こりゃ酷い』短編シリーズ

メリーさんの電話…ですよ?

作者: 鬼狐

なんか書けた。うわ、こりゃ酷い。

 一日目。

 ある日の夜、非通知の電話がかかってきた。


『私、メリーさん。今○×公園にいるの』


「すみません。人違いです」


 切ってやった。

 反省はしていない。もちろん、後悔もするはずがない。

 そういえば、○×公園ってここから一駅分の距離だよな。


 その日は、もうメリーさんから電話がかかってくることはなかった。



  ◆



 二日目。

 夜に昨日と同じように電話がかかってきた。


『私、メリーさん。今○○駅にいるの』


 ○○駅って、確か○×公園より僕の家が近かったよな。


『あと、人違いじゃないよ!』


 そう付け足すとブチッと電話を切られた。

 先に釘を刺されてしまった。くそぅ。


 その日は、もうメリーさんから電話がかかってくることはなかった。



  ◆



 三日目。

 いつも通り、夜に電話がかかってきた。

 なんだか楽しみになってきた。


『私、メリーさん。さっき電車の中でお尻触られました!』


 メリーさんが、痴漢されたようです。


『うああ! どうしましょう! お嫁に行けるでしょうか!?』


 なんか相談された。

 つーか、関係ないよね。

 むしろ痴漢されるほどのかわいい容姿をもっているという考え方をすれば、誇るべきではないだろうか。

 ……ん? そんなことはないって?


「うん。まあ、大丈夫じゃね?」


 と、曖昧な返事をしておくことにした。


『そうですか! ありがとうございます!』


 ブチッと電話が切れた。

 お礼を言われた。

 なんというか、律儀なメリーさんだなぁ。


 その日は、もうメリーさんから電話がかかってくることはなかった。



  ◆



 四日目。

 

『私、メリーさん。今××駅いるの』


 ××駅って○○駅の隣の駅で僕の家の近くじゃん。

 どんどん近付いてきてる。


『あ、昨日場所知らせるの忘れてた! てへぺろ☆』


「…………。」


『…………ごめんなさい』


 ブチっと切られた。

 恥ずかしかったようだ。じゃあ、するなよ。


 その日は、もうメリーさんから電話がかかってくることはなかった。



  ◆



 五日目。

 

『私、メリーさん。今あなたのマンションのゴミ捨て場にいるの。…うぅ……臭いよぉ……』


 ブチッと切れた。

 確かにあのゴミ捨て場は臭い。

 どっかの誰かが大量の生ごみをそこに放置していたからである。

 もちろん、僕じゃないっすよ?



  ◆



 六日目。

 メリーさんからの電話があった。

 無視した。めんどかったから、まる。

 そのまま寝た。

 一晩中電話してたみたいだけど、マナーモードにしてたし日頃の疲れの所為か、ぐっすり寝れた。


 翌朝、携帯を確認してみた。

 

 着信記録 九百七十二件


「多っ!?」


 一晩で!? どうやって!?

 大量の着信記録が押し出されるかのようにメモリから消去されたのだった。



  ◆



 七日目。

 流石に反省した。今度はちゃんと出てあげよう。

 そう思って通話ボタンを押した。


『あ、繋がった!』


 とてもうれしそうだった。


『あ、えっと! わ、私! メリーさん! 今! あなたのマンションの玄関にいるの!』


 とてもうれしそうにそう告げた。


『じゃあね!』


 ブチッと切られた。

 うん。まあ、良かった。元気で。



  ◆



 八日目。

 

『私、メリーさん。今あなたの部屋の前にいるの』


 おおぅ。僕のマンションの警備システムを掻い潜るとはすごいな。

 何やってるんだ、警備員のおっちゃん。


『あの、玄関のドア開けといてくれないかな? あはは…』


 ブチッと切られた。

 不法侵入を企んでいるようだ。

 ちゃんと戸締りをしておこう。最近物騒だからね。



  ◆



 九日目。

 電話に出ると泣きじゃくる声がメリーさんの声が聞こえた。


『開けといてって言ったのにぃ……』


 本当に不法侵入するつもりだったらしい。

 うーん、でも、なんだか可哀想だな。

 まあ、声からしてみれば年下の女の子だし、ここは年上の男として少しだけ不本意ながら相手してあげよう。


「わかった、わかった。明日は開けといてやる」


『ぐすっ……ほんとぉ……?』


「本当だ。僕が今まで嘘なんかついたことあるか?」


『いや…知らないけど……』


 遠回しで僕は彼女の不法侵入を許してしまったことになる。



  ◆



 十日目。

 

『私、メリーさん。今ついにあなたの家の中にいるの!』


「不法侵入されていた!?」


 僕は家の隅々まで探した。

 しかし、メリーさんの姿はどこにも見当たらなかった。

 あ、十円見っけ。



  ◆



 十一日目。

 僕はメリーさんに不法侵入されていることなんか忘れ、近くのコンビニに行こうとした。

 なんか夜のコンビニって新鮮なんだよなあ。

 いつも通り、携帯の着信音がなる。


『私、メリーさん。今あなたの後ろにいるの』


「いってきまーす」


 無視して家から出た。

 バタンとドアが閉まると僕の部屋から突然女の子の泣き声が聞こえた。


「うわあああああああああああん! もうヤダあぁ! 全然相手にしてくれないしぃ! 無視してくるしぃ! どーせ私のことなんてマニアックな秘密道具と同じぐらいにしか見られてるんだぁ! うわああああああああああああん!!」


「……………」


 ゆっくり慎重にドアを開けてみる。

 そこにいたのは、サラサラとした絵に描いたような長い金髪の髪。

 裸足で真っ白なワンピース。

 だいたい八歳ぐらいの幼じょ……ゲフンゲフン女の子。

 そんな小さい容姿なのにけしからん程の大きな胸。

 

「なんか超絶かわいい女の子でした!!」


「しかもロリコンだったあああああ!!」


 コンビニはまた今度にしよう。

 僕は、嫌だー! 離してー! と泣き叫ぶメリーさん(仮)をリビングへと連れて行った。







「うぅ……拉致監禁されるとは……」


 超絶かわいい美幼女のメリーさん改め、メリーちゃんをソファに座らせ、僕もその向かい側に座った途端、メリーちゃんの第一声がそれだった。


「おいおい、人聞きが悪いなあ。拉致監禁なんてしてないだろ。それに僕は、世界一の人畜無害だって。人畜無害過ぎてクラスの皆からは“人畜くん”って呼ばれるくらいなんだから」


「それだけ聞くとなんかやばく聞こえる……」


「それに、拉致をしたんじゃなくて保護したんだ」


「拉致監禁をそう言う人初めて見ましたよ……」


「それに監禁なんてしてないだろ? 首輪も付けてないしさ」


「……じゃあ、なんでこの部屋中の鍵を閉めたの?」


「ん? メリーちゃんと二人っきりで話をするためだよ。ほら、メリーちゃんのこともっと知りたいし」


「ふえ!?」


 するとメリーちゃんの頬が紅くなっていた。


「そ、そんなこといきなり言われると、その、あうぅ…」


 しばらくもじもじして、仕舞いには俯いてしまったメリーちゃん。

 ああ! もう!


「かわいいなあ! もうっ!」


 おもいっきり抱きついた。


「ぎゃー!!」


 メリーちゃんに殴られた。グーで。

 正直痛かった。幼女とは思えないほどの威力だった。一般男性ぐらいの力があった。

 僕は、そのままソファに倒れ込んだ。


「ああ、ごめんなさい!」


「いや、いいんだ。今のは全体的に僕の責任だから」


 いや、僕を欲情させたけしからん容姿のメリーちゃんの責任でもあるな。


「私、人間じゃないから、力が強くて……」


 しょぼーんと落ち込むメリーちゃん。


「あーもう! 可愛過ぎるうう!!」


 抱きついた。


「ぎゃー!」


 殴られた。

 あれ? 何これデジャヴ?

 床に激突した。


「ご、ごめんなさい!」


 ……もういいや。欲求不満でメリーちゃんを押し倒しちゃう前に本題に入ろう。


「で、メリーちゃんはなんであんな電話を?」


「あの、都市伝説の『メリーさんの電話』を『本当にある怖い話』にしてみようかと思って……」


「……ふ~ん。いや、でも、お前全然怖くなかったよ?」


「ふえ!? 全然…怖くなかったの…?」


「うん。全然」


 するとメリーちゃんの目尻にぶわっと涙が浮かんだ。


「うわああん! やっぱり怖くなかったんだ! 様子見てたら全然怖がってなかったし! やっぱり私才能なかったんだあ! やっぱり私なんて出番が全然ない秘密道具と同価値でしかないんだあ! うわあああああああん!!」


「で、でもなんでそんな事をしようと思ったんだ?」


「…ひっく…だって、だってぇ……私、まだこの業界に入ったばっかりでぇ…ぐす……」


 メリーちゃんは、涙を拭って、涙を堪えながらそう応えた。

 つーか業界って……。


「私の名前と…ひっく…同じ名前の都市伝説を…ぐす…見つけたからぁ」


「……だから、『メリーさんの電話』という都市伝説を実現しようとあんな電話を……」


 メリーちゃんはコクリと頷いた。

 なんというか、うん、あれだ。

 理由が幼稚だ。普通は自分と同じ名前だからという理由で選んだりするだろうか。

 メリーちゃんが言うその業界がどんなのかわからないし。

 でも、まあ、ふむふむ、なるほどなるほど。


「……よし、わかった!」


 僕は勢いよくソファから立ち上がった。


「?」


「お前が立派な“メリーさん”と呼ばれるように僕が鍛えてやろう!!」


 ビシッ! 人差し指でメリーちゃんを指差す。


「ふえ!? でも、どんな……」


「いやいや、別に気にすることなんて何にもないよ。困ってる幼女がいると迷わず助ける。それが僕のマニフェストさ!!」


「なんだかカッコよく聞こえるけど! なんだか気持ち悪くも聞こえる!」


「じゃあ、これからメリーちゃんは僕の嫁だ!!」


「ふえ!? そんな嫁だなんて…いきなり……」


 顔が熟したトマトのように紅くなったメリーちゃんは俯いてしまった。

 

「じゃあじゃあじゃあ! これからは僕のことを“お兄ちゃん”って言ってね!」


「えっと、あの、その…お、お兄ちゃん…?」


「ぐはっ!」


 上目遣いで言われた。

 何処でそんな最先端技術を覚えたんだ。

 僕は耐えきれなくなり鼻血を出しながら床に倒れた。

 僕、撃沈。


「うわあ! お兄ちゃんが倒れたよお! 救急車っ!」


 いや、そこまで必要じゃないから。

 ……まあでも、計画通り。フハハハハ!!


 こうしてロリコンの僕とメリーちゃんとの同棲生活が始まるのだった。

以上、ロリコン主人公とメリーちゃんのお話でした。

メリーさんの電話って、意外にコメディーが多いんですよね。


~おまけ~


「もしも『あ、エミリン? あたしよ、あ・た・し! メリーよ! ねえ、今暇~、あたし? ちょー暇! ちょーおいしいケーキ屋見つけてさ~。一緒に行かない? え? 私? 何処にいるかって? ふっふっふっ、聞いて驚かないでよ。今あんたの後ろに―――』すんません。人違いです」



………なんかすんません。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] メリーさんって誰? [一言] 怖―いよ
[良い点] 怖くないようにしていたから読みやすかったです
[良い点] 主人公の心が固すぎて面白かったです。 あと人畜君っていうのに密かにつぼりました。
2018/02/14 22:36 アニメ見流夫
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