ご 家族
ちょっと義妹要素がすくなくないかと
「ちょっと!てゆーかココどこなのよ!」
ロングヘアーが叫び、
「ふぇ〜ん、知らない人ばっかりだよぉ」
ポニーテールは涙ぐみながら、
「………見たことのない場所…」
ショートヘアーが静かに周りを見渡している。
もう、ホント…何がどうなってんだか…
今日、俺は死んだじぃちゃんの倉屋敷を整理していたら、身元不明の金髪碧眼美少女クーと出会った。クーは自分のことは何も知らない、ただ俺を所有者とだけ言った。
なぜクーがあんな所にいたのか、そして彼女は何者なのか、それを探る為に俺はクーと一緒に倉屋敷を調べることにした。
そこで新たに見つけたもの、
二つの黒い箱、
そしてその中に入っていたもの、
三人の少女、
そう、今俺の目の前にいるロングヘアーとポニーテールとショートヘアーの金髪碧眼美少女がそれだ。
「よし、みんな。静かにして私の話を聞いてくれ」
クーが場を取り仕切り始めた。
「な、なによアンタ!」
「ふわぁ〜誰ぇ〜?」
「……」
突っ掛かり、疑問、黙視などなど、少女達の様々な反応も意に介さずクーは話を続ける。
「突然なことでみんな少々混乱していると思うが、まずは各々自己紹介をして欲しい」
「自己紹介ですって?!」
「自己紹介は得意だよ〜」
「…自己…紹介。…姓名、現所属社会的機関又は団体・法人を他者に説明すること…名刺を渡すことで一連の作業を省くことができる」
ああ、ホントに三者三様だなぁ。
「まず名前から言ってもらおうか。ちなみに回答拒否は受け付けないし虚偽の報告は厳しく罰する」
なんかクー、カッコいいな。ていうか尋問みたいになってるぞ。
「なによその態度!何様のつもり?!ていうか名前なんて知らないわよ!!」
「え〜っとねぇ、私の名前はねぇ〜、え〜っとぉ……ありゃ?自分の名前がわかんないよぉ」
「……個別識別IDは…不明…」
「じゃぁ、出生地は?」
「知らないわよ」
「お母さんのお腹だよ〜」
「…病院?」
全滅か!
「クーの時と同じだな…」
「むぅ…」
俺とクーは頭を抱えた。
彼女達との遭遇はクーの謎、なぜじぃちゃんの倉屋敷に美少女が保管されていたかを説明する貴重な手掛かりになると思ったけれど、期待は見事に外れた。
いや、それどころか人数が増えたおかげでさらに謎の重大性が膨らみ事態がややこしくなったと言える。
一体全体、何がどうなってるのか…
なぜ俺はこんな事態に巻き込まれたのだろうか?
もしこの事件にじぃちゃんが関わっているのだとしたら、何があったのだろう?
そしてなぜ、唯一の肉親である俺に話してくれなかったのか?
疑問や謎は膨らむだけだ。
「…よし!」
クーが突然頷いた。
「みんな、私の名前は“クー”!みんなと同じく自分の事は何一つわからない。私の横にいるのが“ユキ”私を発見した、私の所有者だ。ちなみにみんなもユキが発見したんだ」
「“所有者”……その言葉はなぜか理解できるわ。てか、そんな冴えない男が所有者?!わけわかんないわよ!」
悪かったな。こっちもわけわかんないんだよ。
「ユキさん?よろしくお願いしますぅ〜」
「所有者……マイン・フューラー…」
「私はユキの家にお世話になっている。みんなもそうするといい。私達は似た者同士、家族のようなものだ」
「ふん、まぁ行くアテもないから、世話になってやらなくともないわよ!」
「わぁ〜い、楽しそうだよ〜☆」
「家族…集団生活する血縁団体…仲間内で強い結び付きを持つ…」
「そう、私達は家族だ、ふぁみりー!」
…なんか俺抜きでどんどん話がすすんでるんだが。
まず家主である俺に許可を取ってだな…
って、まぁいいか。拒否したり警察に引き渡すって言えばまた泣き叫ぶだろうからな。
美少女に囲まれる生活と思えば悪くないじゃないか!
なぜこんなことになったかとかは、また別の日にたっぷり悩めばいい。
「さて、と。話は済んだようだな。それじゃぁ…名前、か」
「うむ。私の時と同じように立派な名前をつけてやってくれ!」
「変な名前つけないでよ!」
「じゃぁ、まずお前。いつもツンツンしてるから、angryからとって“アン”だ」
「む、由来は気に入らないけどそこそこなネーミングね」
「次は私だよ〜♪」
「明るい笑顔が可愛いから…“サン”!(sunny smile:明るい笑顔)」
「わ〜い☆可愛い名前だよ〜」
「ふん、私の“アン”ほどじゃないわね!」
「で、最後が」
「…最後は…私…」
「冷静だから、“玲”な」
「…玲…」
「よし、これでネーミングは終了!ご苦労だった、ユキ」
まぁ、疲れるほどのことはやってないけどな。
さて…これからの生活、どうなるのやら…
───そこから50メートル南
まずいなぁ…
「どうしよう」
道に迷った…
日本の路地裏は狭苦しいし入り組みすぎだ…
もしかしてバスに乗り間違えたとか?
いや、そんなはずは…
でもいくら探しても“佐伯”なんて表札見つからないし…
「こういうのを、途方に暮れるっていうのかな…」
既に日が沈みかけている。
僕は夕暮れの中で一人ぼっちになっていた。
もう、ホント。ちょっと泣きたくなった。