よん 増強
(´・ω・`)更新速度遅めですかね
み゛ーんみ゛ーんみ゛ーん
ジワジワジワジワ
ツクツクホーシツクツクホーシ
なんだろう、この昆虫オーケストラは…
「日本の虫は元気…」
ブォーン
パパァー!!
ドッドッドッ
我々日本国民党はぁ中韓の内政干渉にぃ断固抗議するぅ!!
日本の街中はとても賑やかだ…
以前、ドイツにいる僕の叔父の所で暮らしていた時は、こうはいかなかった。
「それにしても暑いなぁ」
空から容赦なく降り注ぐ太陽光線が地面のアスファルトを極度に加熱させている。それがまた大気を通常よりも上昇させる。
こういう空間にいると、地球温暖化をまさに肌で感じる。
確かCO2削減を取り決めたキョート議定書のキョートも日本の都市だとどこかで聞いたな…
「そんな事より、早くバスに乗らないと…こんなところにずっといたら死んでしまう」
バスの停留所は目の前、すでにバスが止まっていた。
僕は先を急ごうとしたが、残念。日本のバスの仕組みはさっぱり分からない。
あのバスであっているのか不明だ。
日本語は喋れるし読めるが、それでも完璧じゃなかった。
「…聞いてみようかな」
炎天下の中、ちょうど近くを若い女性が通り掛かっていたのでそうすることにした。
「あの、すいません」
「はい?」
女性がこちらを振り向いた。
「○○に行くのは、あのバスであっていますか?」
微笑みながら尋ねる。
「あ、ええ。そうですよ」
彼女も微笑みながら返してくれた。
綺麗な笑顔。
それを見たらなぜか不快な暑さや騒音も気にならなくなって、心地よい気持ちになった。
「そうですか。ありがとうございます」
笑顔は万国共通だと思った。
───そこから5キロ西
佐伯邸
さて、どうしたものか。
俺の目の前には二つの大きな黒い長方形の箱が並んで横たわっている。
じいちゃんの蔵から見つかったのを家の中まで持ってきたものだ。
「ああ…見つけてしまった…」
まだ箱を開けてはいないが、俺にはわかる。この中に入っているであろう物が。
「よいしょっと」
ふと横を見ると、クーが箱に手をかけフタを開けようとしていた。
「ストォーップ!!!」
「わっ?!」
俺は慌ててクーを箱から引き離した。
「な、なにをするぅ!」
クーは抗議の目でこちらを見つめる。
「クー…いいか、…あれはパンドラの箱なんだ」
そうとも。きっとあの箱の中にはクーの時と同じように“誰か”が入っているに違いない!
はっきり言ってこれ以上事態がややこしくなるのはごめんこうむりたい。
と俺は懸念しているのにも関わらず…
「ユキは変なことを言う…あの箱のなかには私に身元に関係する何かがあるのかもしれないんだぞ!」
そういってクーは箱に向かって飛び込んだ。
「あっ、こら!!」
「でぃやあ!!」
クーが二つの箱を同時に開ける。
「ああ!?!」
俺は見てしまった…あの箱の中身を。
俺の予想では箱に入っているのはあの時と同じく人間だったのだが…
御名答!!
確かにクーと同じく少女がいた。
片方の箱にはクーより背の低いショートヘアーの女の子が、
もう片方にはストレートのロングヘアーとポニーテールの女の子が二人向かい合って眠っていた。
三人とも西洋人のようだ。
クーの例に漏れずかなりの美少女。
「おぉ…これは!」
「なんてこった…」クーが目を輝かせながら眠る美少女三人組を見つめている横で、俺は頭を抱えた。
合計四人の身元不明人を引き取らなければならないのだから。
25歳の独身男が背負うにはあまりにも重過ぎる!
というかなんで蔵の中に美少女が四人も保管されてんだ!!
「ほら、起きろ!」
クーが箱の中に眠る美少女の体を揺すって起こそうとしていた。
「ちょっ!何やってんだ!」
「何って、起こそうとしているんだが?」
「駄目!これ以上ややこしくするな!」
「ややこしくって…何を言ってるんだユキ。もう見つけてしまったのに、このまま彼女達を放置しておく訳にはいかないんじゃないか?」
「う゛…」
「それに彼女達は境遇が私と同じようだ。それなら彼女達はこの一件に関して何か知っているかも知れない」
「むぅ…」
確かにクーのいうことに道理がある。
というか10歳に言い負かされる俺って…
「…わかったよ」
「うむ。では、ユキ」
「何?」
「彼女達のムネを触れ」
「……
はいぃ?!!」
喜んでと言いたいところだが。
「なんで?!」
「さっきからこんな近くでユキが怒鳴っても、私が体を揺すっても目を覚まさない。これから察するに彼女達は普通の方法では起きないのだと思う。そこでだ、私と同じようにムネを触れば目を覚ますんじゃないか?」
「いや、しかしだな…その、やっぱり」
「うぅん。やはりユキには抵抗があるか、ならば代わって私が」
「いや、やらせていただきます」
俺は再び欲望に負けた。人として負けた。
「ユキ、…行きます!」
俺はゆっくり黄金の右手を伸ばした。
最初の標的…ではなく起こす相手はロングヘアーの女の子だ。そして、
俺のゴッドハンドは少女の小高い丘に達した。
「あ、柔らかい…」
至福の快感に包まれる俺の視界に、少女のまぶたが開かれるのが見えた。
目が会う。
「やぁ、おは…」
爽やかな挨拶をかます前に少女の拳が俺の顔面にクリティカルヒットした。
「ぐはぁ?!!」
「ど、どこ触ってんのよ変態ぃ!!!」
「起きたな私の予測通りだ」
ああ、確かに起きた。俺は永遠の眠りにつきそうだが。
というか軽く脳震盪だ。
「信じらんない!警察、警察ー!!」
「お、俺には救急車を…」
顔面の痛みに耐えながら顔を上げる。
すると…
「ふわぁ…おはようございますぅ」
ポニーテールの女の子が目を覚ましていた。
「ちょっと、狭いのよ!」
「ふぇえ?!いきなりそんなこと言われてもぉ…困るよぉ」
「その喋り方腹立つわね…もっと普通に喋りなさい!」
「えーん!」
一つの箱の中で騒ぐ彼女達の横で、もう片方の箱からショートヘアーの女の子が顔を出していた。
彼女もまた金髪碧眼で、神秘的な深い瞳で俺を見つめていた。
「顔…痛そう…」
そう言って少女は優しく俺の腫れた顔面を撫でた。まだ横ではポニーテールとロングヘアーが言い争っている。
「いやぁ、ユキ。これからは賑やかになりそうだな!」
クーの楽観的な言葉が、右の耳から入って左から抜けていった。