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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王とハンバーガーの章
9/102

Episode08 ギター

 黒い悪魔を葬り去ってから、師匠は私と距離を置くようになった。

 それを柄にもなく寂しく思っていた4日目の夜、師匠に話があるといわれた。

「あんたさ、本当にこの世界の人じゃないの?」

 これ以上嫌われるのは嫌なので、私は素直に頷いた。

「魔王って何か、グーグルで調べたんだけど、結構悪い奴だったのよね。人の生き血をすするとか、マジなの?」

「かつての主食は人の血であった。それこそが、私の力の源ゆえ」

「もしかして、今も?」

「いや、ケチャップがあれば問題ないようだ」

「そういうもんなの?」

「うむ、3食ハンバーガーだが問題ないぞ」

「でも隠れて人の魂を食らってるとか」

「それはない。食らうような高貴な魂を持つ客がこの店には来ないからな」

「嫌み?」

「事実を述べたまでだ」

 答えると、師匠は少しほっとした顔をした。どうやら、私は知らず知らずのうちに彼女に不安を与えていたらしい。そう言えば、魔王という肩書きはそう言う物だったと、今更ながらに思い出す。

 ここで暮らすうちに忘れていたが、そもそも私は人に恐怖を与える存在なのだ。

「師匠は、私が恐ろしいか?」

「よくわからない。剣とか出したときは、さすがに少し怖かったけど」

「もしも、師匠が私を不快だと思うならいってくれ。そのときは、潔くここを立ち去るつもりだ」

「行く場所、あるの?」

「ない。しかし師匠は私にハンバーガーのおいしさを教えてくれた人だ、そんな師匠を苦しめたくはない」

「ほんと、あんた魔王っぽくないわね」

「まあ、できたらここに居たいというのも素直な気持ちだ。師匠のハンバーガーとは、離れがたい」

「そこ、私と離れがたいとか言おうよ」

「師匠とも離れがたい」

「いや、今更だし」

「本当だ。師匠のハンバーガーと同じくらい、師匠の歌も好きなのだ。あのギターとか言う楽器を奏でている姿は、美しいと思う」

「ほ、褒めても何も出ないよ」

「事実を述べたまでだ」

 師匠は突然赤くなると、私の方を乱暴に突き飛ばした。

「そ、そこまで言うならここに置いてあげてもいい」

「本当か! ハンバーガーをまた食べてもいいのか!」

「あんた、ホントそればっかりね」

「師匠とも離れがたいぞ」

 私が言うと、師匠はようやく私に笑顔を向けてくれた。

「まあそこまで言うなら、たまには歌ってあげようかな。失恋ソング以外も」

「なら、ロッカーからギターをとってこよう」

「壊さないでよ」

「安心しろ、師匠と師匠の大切な物は何があっても傷つけない」

 私の言葉に、なぜだか師匠は少しくすぐったそうに笑った。


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