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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と日常の章 その1
75/102

Episode07 先生

 最近私に心強い先生が出来た。

 それはインターネットという見えない世界に住む、グーグルという名の先生である。

 この世界のことを手早く学ぶ方法は無いものかと悩んでいたとき、それならばグーグルが良いと教えてくれたのは師匠だった。

 師匠の家には先生を召喚できる魔法のテレビが1台あり、自分が使わないときは好きにして良いと言ってくれたのだ。

 それ以来、私は知りたいことがあると先生に尋ねることにしている。

 彼は人間ではないので言葉や表情はないが、疑問を告げるとたくさんの回答を提示してくれるので非常に心強い。

 だから私は毎日のように先生に質問をした。

 あまりに質問が多いので、さすがの先生でも答えられない事が度々あったが、それでも答えに辿り着く為のしるべを示してくれるので、彼は今や大切なパートナーとなっていた。

 けれど先生があまりに優秀な所為で、私はいつのまにか自分で考えると言うことをおろそかにしていたようだ。

 そしてついに、私はそれことで師匠にこっぴどく怒らてしまった。

 最近パソコンに頼りすぎだと前々から指摘されていたが、それをうっかり忘れて師匠との会話中にでた疑問を、先生に尋ねてしまったのだ。

「ポテトとオニオンフライのどっちがよりハンバーガーに合うか何て、別にパソコンで調べる事じゃないでしょ!」

「しかしダイナーを営む者として、その問題はとても重要な事かと……」

「そうかもしれないけど、今は世間話的なノリで聞いたのよ。それに私は答えが知りたいんじゃなくて、あんたとイチャイチャしながら馬鹿馬鹿しい会話をしたいだけなの!」

 そう言ってむくれると、師匠は先生の前に座っていた私の膝に乱暴に腰を下ろす。

「最近、あんたパソコンばっかりじゃない。たまにはグーグルじゃなくて私に質問しなさいよ」

「しかし師匠の手を煩わせるのも悪い」

「とかいって、人に言えないような検索ワード打ち込んでるとかじゃないわよね」

 確かに師匠に聞きづらいことは全て先生に質問していると白状すれば、師匠が私の手からマウスを奪った。

「履歴を見てやる」

 恥ずかしいのでそれは困ると言ったが、先生はあっけなく私の質問の内容を白状してしまった。

 しかし本来なら、ここで羞恥心に顔を赤らめるのは私のはずであった。

 にもかかわらず、真っ赤な顔でマウスを握っているのは何故か師匠の方だった。

 もしや赤面するほど怒っているのかと、私は恐る恐る師匠の視線の先を確認する。

 見たところ、表示されているのはここ2日の間に私が先生に尋ねた質問のようだった。

『恋人に会えなくて寂しい時どうすればいいか』

『人に受けるジョークはどうすれば言えるのか』

『バナナに正しい剥き方はあるのか』

『アメリカはどれくらい広いのか』

『ジェイソンさんはどこに住んでいるのか』

『ジェイソンさんに襲われたときはどうすればいいか』

『ジェイソンさんに勝つ武器は何処で売っているのか』

『ジェイソンさんから恋人を守るにはどうすればいいか』

『ワイキキビーチとは何なのか』

『恋人とずっと一緒にいるためにはどうすればいいか』

『恋人に怒られて落ち込んだときはどうすればいいか』

『恋人を喜ばす為には何をしたらいいのか』

『愛とはそもそも何なのか』

『魔王でも結婚式をしてもいいのか』

『呪いのない結婚指輪を買うには何処に行けばいいか』

『恋人と沢山キスをするにはどうすればいいか』

 などなど全部で30件ほどの質問事項がつらつらと並んでおり、師匠はそれを黙って見つめていた。 

「なにか師匠の気に触る質問があっただろうか……?」

「気に障るって言うか、ちょっと驚いたって言うか」

 そう言うと、師匠は履歴をさっと閉じる。

「別に隠す気はなかったのだ。だけど、ジェイソンさんのことを沢山調べたのがばれたら師匠に笑われてしまうと思って!」

「恥ずかしいの、そこなんだ」

「でもこういう事は調べない方が良いな。うっかりジェイソンさんの写真が沢山ある場所に飛んで、とても怖い目にあった」

 だから他の殺人鬼についても調べたかったがやめたのだというと、師匠が呆れた顔をした。

 とはいえ、どうやら怒ってはいない様子である。

 それにホッとして、けれどすぐに私は不安になった。今回は事なきを得たが、師匠の機嫌を損ねる質問を今後もしないとは限らない。

 なのでこれからは、疑問は全てまず師匠に尋ねようと決意した。

 けれどそれを告げると、何故か再び師匠の顔が真っ赤になった。

「恥ずかしいからそれはやめて」

「どうして師匠が恥ずかしがるんだ?」

「とにかく、恥ずかしい質問は禁止!」

 そう言って師匠が私の腕から逃げてしまった。

 それがとても切なかったので、私はグーグル先生に恋人とずっとくっついているにはどうすればいいかを聞いてみた。

 しかし難しい質問だったのか、先生から明確な答えは出なかった。

 でも何故かその晩、師匠がいつもより長いこと側にいてくれた。その上キスも沢山してくれた。

 もしかしたら、先生は博識なだけでなく魔法も使えるのかもしれないと、私は彼を更に尊敬した。

【お題元】

「師匠が嫉妬する話」 と言う幻聴から。

(そう言うオーダーがあると思って書いたけど、確認したら何処にもなかった……)

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