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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と日常の章 その1
72/102

Episode04 プレイボーイ

 久しぶりに店に来たチャーリーは、まるで吸血鬼の餌食にでもなったかのような青白い顔をしていた。

「どうしたんだ、最近店に顔を出さないとおもっていたが、まさか病気にでもなったのか?」

 やつれた表情でフラフラと店に入ってきたチャーリーは、何か言いたげに口をぱくぱくさせている。

 見かねた私が腕を貸し、空いているソファ席に彼を座らせたところ、「優しくしなくて良い」と口を挟んだのは師匠だった。

「自業自得だから良いのよ」

 途端にチャーリーが泣き始めたので、私は彼にナプキンを渡しつつ師匠にどういう意味かと尋ねる。

「そいつ、彼女が出来たの」

「おめでとう」

 と思わず喜ぶと、途端にチャーリーの泣き方が激しくなった。

「泣くほど嬉しいのか?」

「それは最初だけだったみたいよ」

 他の客がいないからか、師匠は不機嫌そうな表情を隠すこともなく、私とチャーリーの前にどっかりと腰を下ろす。

「先月くらいにウチに凄い転校生が来たの、プレイボーイに載ってるような巨乳ちゃんなんだけど、そいつがあろうことかチャーリーにお熱なのよ」

「ぷれいぼーい?」

「チャーリーがあんたに見せてたでしょ、可愛くてセクシーな女の子が沢山載っている雑誌」

 その雑誌から飛び出してきたような女子生徒が転校してきただけでも驚きなのに、あろう事かチャーリーに惚れた事で師匠の高校は大騒ぎなのだという。

 私はチャーリーの事をとてもいい男だと思っているが、学校での評価は違うらしい。似合わないというのが大多数の意見なのだそうだ。

「男どもにはやっかまれるし、女子には絶対体目当てだって白い目見られるし、こいつ孤立しちゃったのよ」

「それが寂しくて、こんなに痩せてしまったのだな」

 こくりこくりと頷きながら、チャーリーは師匠を見つめた。

「あと、特に白い目で見るから」

 チャーリーの言葉は、どうやら師匠へ向けられた物のようだ。

 だがせっかくチャーリーが一言発したというのに、師匠の方は相変わらず不機嫌な顔である。

「別にあんたには何の感情もないけど、どう見てもおっぱい目当てで付き合ってるってわかる男に、温かい目なんて向けられないわよ」

「付き合ってないよ! 確かに言い寄られてるけど、俺は好みじゃない!」

「とかいって最初の頃天狗になってたのは誰? それに四六時中、あの子のおっぱいばっかり見てるじゃない」

「だってあんなでかいんだぞ! 男だったら見ちゃうだろ! なぁ!」

 と同意を求められたので、私は胸の大きな師匠を想像してみた。

「たしかに、師匠の胸がスイカほどあったら目が放せないかも知れない」

「変な妄想しないでよ! っていうか、好きでもない女の子の胸を見るのが問題なの」

「好きでもない女の子の胸は、べつにいらないな」

「ほら」

 と何故だか師匠が得意げになると、チャーリーは裏切り者と私を睨む。

「そう言えるのはあれを目の前で見てないからだ。ちょっとまってろ、今あいつを呼ぶから」

 なら飲み物を用意せねばと私は思ったが、師匠はまたしても酷く腹を立てていた。

「やめてよ、ここには呼ばないで!」

「君がこいつは安心だっていったんだろう」

 言うなりチャーリーは携帯電話をかけ、師匠は機嫌の悪い顔で頬杖をついている。

 むくれる師匠も美しいので、私はチャーリーの彼女が来るまでそれをずっと眺めていた。

 それから15分ほどしたとき、チャーリーの言う彼女が現れた。

「お待たせしました」

 と現れた少女は、背丈こそ師匠と変わらないがやたらと肌が出ている。暑がりなのかとチャーリーに聞いたが、彼は無視した。

「どうだ、凄いだろう」

 私の前に彼女を座らせ、チャーリーが声を潜めていった。

「それより薄着なのが気になる。暑がりなら窓を開けて差し上げたのだが」

 私も声を潜めたつもりだが、目の前の少女は慌てて首を振った。

「そんなことはないです、むしろ寒いくらい」

「それはいけない。チャーリー、彼女に上着を貸してやれ」

「何で俺が」

「彼氏なら貸すのが普通だろう」

「彼氏じゃないってば! それにお前が貸したって良いだろう」

「そうしたいのは山々だが、私は身も心も服すらも師匠に捧げると決めたのだ。彼女に無断で、我が身の一部を分け与えることは出来ない」

 私の言葉にチャーリーは忌々しそうな顔をし、少女の隣に座っていた師匠はガッツポーズをした。理由はわからなかったが、師匠が喜んでいるので私の判断は間違っていなかったようだ。

「良いわよ、貸してあげても」

「ならこちらを是非使ってくれ。君は胸周りが大きいが、私も大柄なので窮屈ではないはずだ」

 そう言って上着を差し出すと、少女はもじもじしながら頬を染める。だが体をゆらすたび、胸元の開きすぎたTシャツから胸がこぼれそうになり、非常に危なっかしい。

「失礼する」

 胸が出ては大変だと思い、私は上着のボタンを素早く留めた。こうすればいくらもじもじしても胸がこぼれることはないだろう

「君はもう少し大きいサイズの服を着た方が良い。その方が暖かいし、肌を冷やすのは健康にも良くない」

 途端に、何故だかチャーリーが忌々しそうな顔をし、またしても師匠が得意げに笑った。

 その後少女にハンバーガーをご馳走しながら、私は彼女から学校での二人のことを聞いた。

 学校での師匠の様子を聞けるのは凄く楽しかったが、チャーリーは最後まで浮かない顔だった。

 その上気分も悪くなってしまったのか、チャーリーは「ちょっとトイレ」と話の途中で席を立ってしまう。

 けれど正直、彼がどうしてここまでやつれているのかがわからない。

 確かにやっかみは辛いだろうが、少女はとても礼儀正しく素敵な女性だ。彼女に愛して貰えるなら、もっと幸せな顔をしても良いのにと思った。

 だがその答えは、意外なところからもたらされた。

「あの、魔王様……」

 そう言ったのは少女だった。しかし少女には、私が魔王であることは告げていない。

「あの、気付いていらっしゃいませんか? 私魔王城のメイドの、吸血コウモリです」

 思わず目を会わせた私と師匠の前で、少女が小さなコウモリに変身する。

 いやむしろ、こちらに戻ったというのが正しいだろう。

「魔王様と奥方様を騙してしまい申し訳ありません。ただ私、あの人にはこの姿を見せたくなくて」

 そう言うと、メイドは小さな体を更に小さくする。

「思い出したぞ。確か以前、君にはチャーリーのことを相談されたな」

「はい、私のような小さき者の言葉に耳を傾けて頂き、本当に感謝しています」

 途端に師匠が説明しろという顔をしたので、私は慌てて彼女とのやり取りを思い出す。

「前にチャーリーの好きなタイプを聞かれたのだ」

「もしかしてあんた、そのときプレイボーイ見せたんじゃないでしょうね」

「みせた。チャーリーが熱い眼差しを送っているのは、あの雑誌の少女か師匠だけだ。しかし変身しているとはいえ、師匠とチャーリーがイチャイチャするのは見たくないのだ」

 それでプレイボーイを見せたのかと再度確認されたので、私は大きく頷いた。

「しかしその事をすっかり忘れていた。なるほど、通りでやつれるわけだ」

 逆にメイドが健康そうなわけだと笑うと、師匠が呆れる。

「あいつには良い薬だけど、殺さないようにしてあげてね」

「勿論です。それに実を言うと、私チャーリーさんじゃなくて、チャーリーさんの血が好きだったみたいなんです。今日魔王様とチャーリーさんのやり取りを見て、やっぱりちゃんと気づかってくれる殿方のほうがいいなって思ったんです」

 わかるわ、と同意する師匠にメイドもはしゃぐ。

「それにチャーリーさん、私と一緒だと不健康になっちゃうでしょ? 最近味も落ちちゃったし、そろそろ潮時かなって思ってたんです」

 と言うなり、以前チャーリーを振った師匠に彼の上手い振り方を教えて欲しいとメイドは尋ねる。

 それを見ていると、女性の心変わりの早さはちょっと怖いなと思った。いつか師匠に飽きられないよう、沢山愛さねばとも思った。

 そしてその後、メイドは帰りの車の中で早速チャーリーを振り、翌日にはフットボール部の血の気の多い彼氏を見つけたらしい。

 チャーリーが彼女のおっぱいだけを愛していたように、メイドも彼の血だけを愛していたのだなとわかったが、それを告げるとチャーリーがまた痩せてしまいそうだったので、私はそれを言わないことにした。


【お題元】

「チャーリー、セックスアピールが強い女性に言い寄られる」

「モテるチャーリーが見たいです」

「モテていても不憫なチャーリーが見たいです」

「モテてもいいけど、最後は振られて欲しいです」

 など、ここには書ききれないほどの「チャーリーは不憫なままでいて下さい」の声より


 オーダーとメッセージ、本当にありがとうございました。

※1/20誤字修正しました(ご指摘ありがとうございます)

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