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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と勇者と恋の章
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Episode54 うるさい

「あのうるさいハエをどうにかしてくれないかね」

 唐突にケリーが家を訪ねてきたのは、師匠と勇者が二人で出かけている時だった。

 以前は仲が悪かった二人だが、勇者殿が歩み寄りを見せたお陰か、殴り合いの喧嘩は日増しに減っている。

 さすがに1ヶ月も一緒にいれば慣れてくる物もあるようで、最近は私抜きで買い物に行くまでになった。

 未だ口での喧嘩は良くあるが、気が合わないわけではないようなのだ。

 好きな映画やドラマの傾向は似ているし、私が嫌いなジェイソンさんも二人で楽しそうに見ている。

 そしてなぜだか、私はそれが少し面白くない。

「ちょっと、聞いているのかい!」

「すまない、ちょっと拗ねていた」

「ともかくあのじいさんが家に来ないようにしておくれよ。毎日毎日愛の詩を大声で読まれて、こっちは迷惑してるんだ」

「愛の詩はダメか? 二人で頑張って考えているんだか」

「お前の所為かい!」

 そう言って、ケリーはその細腕からは想像のつかない怪力で、私の襟首を締め上げる。

「だって、女の人は愛の詩に弱いとケリーが教えてくれたから」

「せめて手紙にして送れ。あとケーキをこっそりポストに入れるのもやめさせてくれ」

「頑張って作ってるのに」

「人を糖尿病にさせる気かい!」

 そう言って頭を叩かれ、私は激痛に呻く。

「とにかく迷惑だからやめさせてくれ」

「しかし勇者殿は本気なのだ。それに私は魔王だし、愛の力には太刀打ちできない」

 そういうと、ケリーが呆れ顔でため息をこぼした。

「そもそもねぇ、私には夫がいるんだよ」

「でも亡くなっているのだろう? それに師匠も言っていたのだ、ケリーはまだ若いし再婚相手を探しても良いと」

「あれだけはごめんだね」

「そんなに嫌なのか?」

「嫌だね、あんな欠点しかないようなジジイ」

「よければどこか悪いか教えてくれ。正すよう勇者殿に伝えておく」

 きっと勇者殿のことだ、その欠点を克服しようと修行を積むに違いない。

「じゃあ、おっきい紙とペンを持っておいで」

 言われるがままそれらを持ってくると、ケリーはその紙が真っ黒になるくらい沢山の欠点を上げた。

「わかった、全て伝えておく」

「さすがにこれで懲りるだろう」

「どうだろう。彼は幾多の困難を乗り越え、私を打ち倒した勇者だぞ」

 そんな馬鹿なとケリーは鼻で笑う。

「これを聞いてもまだ愛の詩を読むようだったら、デートくらいしてやるさ」

 そう言ってケリーは家に帰って行った。

 そしてその翌日、私は勇者からデートの最適なレストランの場所を聞かれた。

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