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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王とサンタの章
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Episode49 愛犬

 ドライブデートをしてから、師匠が一緒に寝てくれなくなった。

 どうやら私は何か思い違いをしていたらしく、師匠を酷く怒らせてしまったのである。

「今日も、だめか?」

「だめ」

「久しぶりにジェイソンさんを見て、酷く怖いのだが」

「だめ」

「床で寝るのもだめか」

「だめ」

 そう言って師匠は部屋に入ってしまった。しかし怖い物は怖い。

 仕方なく、私は枕と毛布をかかえて師匠の寝室の扉の前に座った。

 一緒じゃなくても、少しでも近い方が怖くない気がしたのだ。

 だが問題は廊下が酷く冷えることだ。

 毛布は持ってきた物のそれでも酷く凍えるので、私は体を丸め、師匠の部屋の扉にぴったりと体を近付ける。

 しかしそれでもまだ寒かったので、せめて想像だけでもと師匠と一緒に寝ている自分を想像した。

 師匠は柔らかくてとても暖かい。くっついていると凄くほかほかするのだ。

 その温もりを思い出していると、突然師匠の部屋の扉が開いた。

「……お前は犬か」

 丸まっている私を見下ろす師匠の顔は、酷く呆れていた。

「怒らないでくれ! 私は少しでも師匠と距離の近いところにいたいのだ!」

 慌てて弁解したが、どうやら師匠は怒っているわけではなかったらしい。

「中入りなさい。そこ寒いでしょう」

「寒かったが、師匠の側にいる時のことを想像したら大分マシになった」

「それはあれなの、あんたなりの欲情と取って良いの?」

「浴場?」

「うん、もう良いや」

 最近師匠は、私について色々と諦めた顔をする。それが凄く嫌なのだが、せっかく一緒に寝てくれるというのに、ここで機嫌を損ねるわけにはいかない。

「床の方が良いか?」

「隣でいい」

 思わず喜んで、私は師匠の隣に潜り込む。

「冷たいわね、さすがに」

「すまない。今日はくっつかないようにする」

「いいわよ、ほら」

 許可が出たので、私は師匠の体を抱き寄せる。

「やっぱり、師匠の側が良いな」

 暖かいし、柔らかいし、良いにおいがすると言ったら足の裏ですねを思い切り蹴られた。

「そう言うこと、お願いだから口にしないで」

「だって事実だ。何なら試してみるか?」

 師匠に変身してみせようと提案したら、またもやすねを蹴られた。

「やったらたたき出すわよ」

 それは嫌なので、急いで頷いた。

「なら静かに寝なさい」

「そうだ師匠」

「なんだ?」

「最近キスもおあずけだったからしたい」

 アホかという顔で見られたが、それでもお願いすると渋々OKがでた。 

「……なんかもう、あんたって本当に犬よね」

「ならキスより嘗めた方が良いか?」

 そう言えば舌を使うキスもあると、チャーリーが教えてくれたのを思い出す。

 やり方はビデオで見たきりだが、運良く師匠が惚けた顔で口を開けていたので、私は舌を使ったキスをしてみた。

 なんだか、これは、凄く不思議な感じのキスだ。

 普通のキス以上に何度もしたくなるし、師匠の舌に触れると体が燃えるように熱くなる。

 とはいえ呼吸をしなくても生きていける私と違い、師匠は人間なので延々キスしているわけにも行かない。

 名残惜しいが仕方なく唇を離せば、今度は師匠が同じキスを私にしてくれる。

 体が熱くなり、思わず師匠の体を強く抱き寄せた。

 とはいえ本気で抱き寄せると師匠の体が壊れてしまうので、そこの所は考慮する。

 壊してしまいたいという恐ろしい考えが頭をよぎったが、私はもう悪い魔王は卒業したのだ。

 今の自分は師匠の犬だと僅かに残った悪い魔王に言い聞かせていると、もう一度唇が離れ、師匠がギュッと私の体に腕を回す。

「……し…しょう?」

「眉間に皺寄ってるけど、嫌だった?」

「むしろ、このキスは凄く良いな」

 そう言うと、師匠は躊躇いがちにもう一回するかと尋ねてきた。

「1回どころか何万回もしたい」

「それは、色々な意味で死ぬ」

「確かに、師匠には呼吸も必要だな」

「もしかしなくても、あんた呼吸しないの?」

「うむ、だからずっとキスしていても死なないぞ」

「意外と、狼の素質あるのね」

「狼? 犬ではなく?」

「独り言だから気にしないで」

 狼のようなキスとはどういう物だろうかと考えたが、やはり同じ舌を使ったキスしか思い浮かばなかった。

 今度、そのような物があるのかチャーリーに聞いてみよう。

※1/25誤字修正しました(ご指摘ありがとうございました)

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