Episode45 好きなもの
「魔王が一番好きな物って何?」
「師匠だ」
答えた瞬間、頭を殴られた。
「真面目に答えなさい」
「真面目なのだが」
「…じゃあ私以外で」
「ハンバーガーだな」
「…できたらそれ以外で」
「でも、師匠とハンバーガー以外は一番ではないぞ」
「とりあえず好きな物言って!」
「どうしたんだ突然」
「もうすぐクリスマスでしょう。だからほら、プレゼントとか考える時期じゃない」
「あ、別にいらないぞ」
そういうと、なぜだか師匠がショックを受けたように動きを止めた。
「もう頼んであるんだ」
「誰に!」
何故だか首を絞められたので、生命の危機を感じた私は慌てて答える。
「さっサンタさんだ」
「……そうきたか」
「うむ、欲しい物は紙に書いて靴下にいれてある」
「ちなみにその靴下何処?」
「うちには飾りがないので、隣のケリーの家の靴下に入れてきた」
私の首から腕を外し、それから師匠は出かけると告げて家を出て行った。
買い物なら付き合うのにと、誘われなかったことに拗ねていると10分ほどして師匠が帰ってきた。
何故だか師匠の目は真っ赤で、まるで泣いた後のようだった。
「どこか怪我でもしたのか!」
「何でもない」
言うと同時に、何故だか師匠が私を抱きしめる。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫。…だから、クリスマスの飾り買いに行こう。そしたらサンタさん、すぐ側にプレゼント持ってきてくれるから」
いつもより優しい師匠は少し怖かったが、もみの木を飾るのはとても楽しみだ。
「そうだな、あのプレゼントはケリーの家に来ても困る」
ここに、自分の元に届かなければ意味はない。
「師匠」
「なによ」
「メリークリスマス!」
「……それ、まだ早いから」