表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王とハンバーガーの章
5/102

Episode04 甘える

「はい、あーん」

「あーん」

 と、窓際の席にかけているカップルがポテトを食べさせあっているのをじっと見つめていたら、少女に殴られた。

「じろじろ見ないの」

「見ようと思っているわけではない。なぜか目に入ってしまうのだ」

 私がいた世界では、男女は慎ましやかな交際をする物だった。とくに婚儀を終えるまでは。

 ふれ合いといえばせいぜい手に触れたり、軽いキスをするくらい。

 しかしこちらでは、一つのポテトを両端から食べ合ったり、食事をしながら男性が女性を膝の上にのせたり、鼻についたケチャップを嘗めあったりするのだ。

 破廉恥である。しかし、なぜだか、見ていると目がそらせなくなるのである。

 それを素直に言うと、

「たまってるんじゃないの?」

 と少女に言われた。

 どういう意味かと返したら殴られた。

「あんたさ、恋人とかいないわけ?」

「魔王を愛してくれる者がいると思うか」

「あんた、性格はともかく顔はいいし」

「この世界では、顔がよいと異性にもてるのか?魔王でもか?」

「ちなみに体は?鍛えたりしてる?」

「一応鍛錬は欠かしていない」

「腹筋とか割れてれば、問題ないんじゃない?」

 割れているとはどういうことだろうか。私の腹は当てはまるのだろうか。

 そう思い、「確認してくれ」と服をめくりあげたら、少女が真っ赤になって私を殴り飛ばした。

 今日はよく殴られる日だ。

 殴られた勢いで床にひっくり返ると、逆さまの世界で男女が微笑みあっているのが見えた。

 今日もこの世界は平和だと、思わせてくれる暖かな微笑みだった。

 けれどそれを眺めていた私の脳裏には、暗闇と恐怖に囲まれていた私の日常が思い出させた。

 同時に、今見ているすべては夢で、私はまだあの暗い世界の住人なのではないかという考えに支配される。


 ・・・がしかし。

「ほら、おきな!」

 少女に蹴られた腹には鈍い痛み。そうか、やはりこれは夢ではない。

「なにニヤニヤしてんのよ、やっぱり欲求不満なわけ?」

「いや、私は満たされているよ」

 私が笑うと、少女は意味がわからないとつぶやきながら、起きあがる私に手をさしのべてくれた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ