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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王とサンタの章
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Episode42 フォロー

「俺は決めたんだ。恋が実らないなら、潔くあの子の恋を応援しようって」

 先週まで死人のようだったチャーリーが、ある朝物凄く元気になっていた。

「それはとても良いと思うが、師匠は留守だぞ」

「いい、用があるのはお前だ」

 そう言うと、チャーリーは勝手に家に上がり込む。

「俺気付いたんだ。原因はお前だって」

「何の原因だ?」

「お前さ、恋したいとか思わないだろ」

「そんなことはないぞ。素敵な物だと聞くし、願望はある」

「それがもうダメだ。恋をして、そのあとはどうする?」

「恋のあとに何かあるのか?」

 そういうと、チャーリーは「やっぱりそうか」と呟きながら、持っていた鞄の中身をリビングテーブルの上にぶちまけた。

 それは大量のDVD。映画か何かのようだが、表紙に写っているのは裸の女性ばかりだった。

「お前は男として大事な物が欠落している! 恋が出来ないのも、自覚が出来ないのもその所為だ」

「意味がわからない上に、そのDVDは物凄く目に悪いのだが」

「これを望んで直視できるようになれ!」

 チャーリーが目の前に差し出したDVDには、雌豹を思わせるポーズを取る裸の女が写っていた。

「女性の裸を見るのは、失礼ではないか?」

「失礼じゃない。男はみんな、こういうDVDを持ってるもんだ」

「チャーリーもか?」

「これは全部俺のコレクションだ」

「沢山あるんだな」

「お前の趣味がわからなかったから、色々持ってきた」

「よくわからんが、手間をかけさせたようだな」

 とりあえず礼を言うと、チャーリーはさっそくテレビを付ける。

「ちなみに、ホラー映画ではないだろうな?」

「そう言うのもあるが、普通のやつだ」

「怖くはないんだな」

「ムラムラするだけだ」

 良いから画面を見ろと言われ、チャーリーと共にソファーに座ること5分。

 唐突に、テレビの中で女性が服を脱ぎだした。

「あの、チャーリー?」

「なんだ?」

「これはどういうストーリーなのだ?」

「そこの女と、あっちの男がやるんだ」

「何を?」

「ホラー映画でもあるだろう。裸で重なるあれだよ」

「でもあのシーンだけで映画が成立するのか?」

「そう言う映画なんだよ、とりあえず見ろ!」

 しかし正直何が面白いのかさっぱりわからなかった。

 台詞もほとんど無いし、怖くもないのに女は悲鳴を上げるし、非常に退屈だ。

 その所為か、どうやら私は寝てしまっていたらしい。

 ふと気がつくと1時間もたっており、テレビは消えていた。

「おはよう」

 顔を上げると、チャーリーの代わりに師匠が隣に座っていた。

「チャーリーがいなかったか? 一緒に映画を見ていたんだが」

「ゴミと一緒に家の外に放り出したわ」

 ゴミとはDVDのことなのだろう。山積みにされていたそれはなくなり、代わりに師匠が好きな映画がそこにはおいてある。

「もう、あの男ホント最低……」

「チャーリーはいい人だぞ。あの映画も、師匠の恋を応援するために持ってきたらしい」

 それがなぜ恋の応援に繋がるかはわからないが。

「そんなフォローが出る時点で、全く役に立ってないのは明白ね」

「確かに、見るどころか寝てしまった…。チャーリーに悪いことをしたな」

「気にしなくて良い。あと、ああ言う映画は絶対見ちゃダメだからね」

 そう言う師匠の目は、酷く冷たかった。

 理由はわからなかったが、とにかく怖かったので私は二度と見ないと約束をした。

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