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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王とサンタの章
46/102

Episode41 応援

「お前は俺の親友だよな」

「もちろんだ。そんなことよりほら、ポテトが冷めてしまうぞ」

「親友だったら、どんなことでも応援できるよな」

「むろんだ。そんなことよりポテトが…」

「だったら俺と彼女の恋を応援してくれ」

 突き出されたポテトのさきにいたのは、カウンターの側で暇そうにしている師匠だった。

 驚きのあまり、私は片づけようとしていたコップを取り落とす。

 派手な音をたてたが、チャーリーを覗けば他に客はいなかったので、急いで魔法で治した。

「…あの、その、恋というのは、恋か?」

「そうだ、2週間後のクリスマスまでに、告白するつもりだ」

 そう言うチャーリーの目は本気で、そして私は真剣な顔で尋ねる。

「師匠のことが好きなのか?」

「気付いて無かったのかよ!」

「だって、何も言わないし」

「それはまあ、俺の勇気がなかったんだけども」

 そう言いつつ赤くなるチャーリーは、確かに恋をする男の顔だった。

「応援、してくれるよな」

 もちろんだと言おうとした。チャーリーは親友だ。

 親友の恋は応援する物だとギャング団の掟にも書いてある。

 なのになぜか、師匠とチャーリーが、テレビドラマの中の若い恋人たちのように、四六時中キスをしたり、抱き合ったり、裸になったりするのを想像した途端、またしても悪い魔王が目を開けた。

 けれどチャーリーは親友だ。殺す事なんて出来はしない。

「も、もんだいない…ぞ。応援、大丈夫…する…」

 悪い魔王を押さえ込みながら、必死に言葉を重ねると、何故だか涙が止まらなくなった。まるでダムが決壊したように目から涙が溢れてくるのだ。

 お陰で悪い魔王は影を潜めたが、何故だかチャーリーが酷く慌てている。

「すまん、お前が本気だったなんて思わなかったんだ! ホントごめん」

 その上彼は、詫びる理由など無いのにごめんと繰り返す。

「応援、大丈夫…問題…ない」

「いやいい、もう忘れろ。お前の気持ちはお前以上にわかったから」

「いや、恋は…大事だって…師匠が…」

 だから応援すると口にしようとした瞬間、突然目の前の世界が歪んだ。



 そしてその次の瞬間、私は3日後の師匠の家にいた。

 正確には3日間寝込んでいたのだという。高熱で。

「目がさめた?」

 側にいたのは師匠で、彼女は私の手をギュッと握ってくれる。

「チャーリーは?」

「毎日お見舞いに来てたわよ。あと、応援はもういらないって」

「どうして?」

「失恋したから」

 私は驚いて師匠を見る。

「おかしかったのよ。あいつ倒れたあんたを抱きながら、『俺を振ってくれー!』って大絶叫したんだから」

「でも、告白はまだだと…」

「うん。告白されてないけどって驚いたら、好きだっていまさら言うのよ」

 まあ知ってたけどと師匠は言った。どうやら何も知らないのは私だけのようだった。

「知っていたのに、振ってしまったのか?」

「嬉しかったけど、彼の事は友達にしか見えなくて」

 だから言われたとおりにしたのだと、師匠は静かに言った。

「私が応援したら、結果は変わっていたか?」

「こういうのは当人同士の問題。応援は関係ない」

 むしろ大切なのはこれからだと、師匠が微笑む。

「成功したら一緒に喜ぶ。失敗したらなぐさめる。それが一番大事」

「なぐさめられるだろうか」

「大丈夫よ、あんた人の心を暖かくする天才だから」

 師匠に言われると、なんだか頑張れる気がしてきた。

「今すぐにでも、チャーリーの所に行きたい」

「熱が下がったらね。それに、私も心配したんだから」

 だからもう少し私と一緒にいてと師匠が言うので、私は彼女の手を握った。

「それにしても、どうして急に熱なんて出たんだろう」

「知恵熱じゃないの?」

 それはどんな物かと尋ねると、馬鹿が引く風邪のような物だと言われた。

 私の頭がもう少し良かったら、チャーリーを応援出来たのだろうか。

 そんなことを思っていると、また熱が上がってきてしまった。

 考えると熱が出るのに、どうやって頭を良くすればいいのだろう。

 でも次こそは、ちゃんと彼の恋を応援したい。

 そしてそのために、とりあえず解熱剤は持ち歩くことにしようと思った。 

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