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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
良い魔王と悪い魔王の章
44/102

Episode40 人見知り

「あんた、ついにあの子とできたのかい?」

 鼻歌交じりで庭の芝刈りをしていた私に、そう声をかけたのは隣の家の老婦人だ。

 彼女はとても変わった女性で、家の前を通る子どもを大声で怒鳴ったり、家に大量のゴミをため込んだりする癖がある。

 あまりに異臭が酷い日があったので、こっそり消臭の魔法をかけさせてくれと頼みに行ったのが縁でときたまこうして話すようになったが、人見知りなのかいつも話しかけるのは私の方からだった。

 なのに今日は彼女の方から声をかけてくれた。言っている意味はよくわからなかったが。

「別に師匠とは何も作っていないぞ」

「恋人同士になったのかってきいてんだよ」

「それはない。前に師匠に、魔王とだけは恋人にならないと宣言されたからな」

「笑顔で言うことかい」

「恋人ではないが師匠は良くしてくれる。それに最近、キスというのをしてくれるようになったのだ」

 あれはとても良い。されると胸がとても温かくなる。

「…あんた、相変わらず頭のねじが緩いねぇ」

「私は機械ではないぞ」

「そう言うところが馬鹿だっていってんだよ」

 老婦人はそう言うと、こちらへ来いと私を招き寄せた。

 言われるがママ彼女の家の前に立てば、老婦人は家の中から小さな本を持ってくる。

「昔からね、女はこれに弱いんだよ」

「これは、詩の本か」

「愛にまつわる詩をよめば、女はみーんな喜ぶ」

「師匠もか!」

「あれも女だからねぇ、いちおう」

「ありがとう! 早速今夜師匠の前で読んでみる」

 そう言って頭を下げて、それから私は老婆の腕を取り手の甲に口づけをした。

 感謝の変わりに、キスをしてもよいと師匠に教えて貰ったのを思い出したからだ。

「……酔狂だねぇ。こんな汚い婆の手に」

「何処が汚いんだ? 細くて綺麗じゃないか」

 私が言うと老婆は驚いたように目を見開き、それから呆れた顔で笑った。

「本当に変わり者だよあんたは」

「ならあなたは、とてもいい人だな」

「褒めても何も出ないよ」

「事実だ。私の話し相手になってくれるし」

「だがみんなはキチガイだというよ」

「怒鳴っているのは子ども達の為だろう?」

 怒鳴りはするが、老婆の言葉は「車に気を付けろ」とか「遅刻するな」という内容の物ばかりだ。

 言い方が悪いので誤解されがちだが、子どもの身を案じての言葉であるのは、ちゃんと聞けばすぐにわかる。

「不器用だがあなたはいい人だ。詩集もくれたし」

「あんたがあんまりアホな顔してるから、心配になっただけさ」

「そう言うところがやさしい」

 勝手に言っていろとつげて、老婆は家へと戻っていく。

「お詫びに家の片づけなら手伝うぞ!」

「いらん世話だ」

 相変わらず乱暴だが、やっぱり悪い人ではないと思う。

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