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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
良い魔王と悪い魔王の章
41/102

Episode37 マッサージ

 朝目を覚ますと、なんと師匠が花を飾っていた。

「似合わないのはわかるけど、その顔失礼すぎるわよ」

「いや、その、花は似合うのだが、自ら買ってくるのは初めてだったから」

「これはもらい物よ。ファンだって言う人から」

 宅配でと言いながら師匠が差し出した紙には、見てるこちらが恥ずかしくなるような、恋の台詞が並んでいた。

 どことなくチャーリーの字に似ているような気がしたが、差出人の名前は無い。

「まあ柄じゃないけど、こういうの貰えるとやっぱり嬉しい」

 そう言って花の香りを嗅ぐ師匠は、いつもより何倍も綺麗にみえて、何故だか私は焦ってしまった。

 焦った上にとても不安で、それは師匠が学校に出かけたあとも消えてくれない。

 その所為でことあるごとにガラスを割ったり、物を壊していたら、向かいの家からギャング団の頼れるリーダー、アルファがやってきた。

「遊ぶ約束を、していただろうか?」

「心配できたんだよ。魔王の挙動不審な動き、俺の家からバッチリ見えるんだよね」

 何があったのかと尋ねられ、事の次第を話す。

 するとアルファは、私の焦りと不安を取る素晴らしい解決法をみつけてくれた。

「花何かより、もっと凄いプレゼントをあげればいいんだよ」

「…でも私は何も持っていないし」

「じゃあチケットにしなよ。お金もいらないプレゼントだけど、うちのママは凄い喜んでくれる」

 掃除を変わりにやるチケット、庭の草むしりをするチケットなど、仕事を肩代わりするチケットを渡すと、彼のママはとても喜んでくれるらしい。

「しかし、掃除も洗濯も草むしりも私の仕事だ」

「じゃあマッサージは? 年頃の女は、エステとかマッサージのチケットが好きらしいよ」

「なるほど、じゃあ早速作ってみる!」

「1枚とかケチなコトしちゃだめだ。10枚綴りにして大人の魅力をアピールするんだ」

 アルファの助言通りに早速チケットを作り、私はそれをこっそりとポストに入れた。



 しかしその夜、私がチケットを見つけたのはゴミ箱の中だった。

 ショックのあまり、仕事から帰った服のままゴミ箱の側で1時間ほど佇んでいると、師匠がばつの悪そう顔で私の横に立つ。

「もしかしてそれ、あんたがポストに入れた?」

「……」

「か、書いてある文字が読めなかったから、だからてっきり子どものイタズラかと思って…」

「……」

「そんな悲しそうな顔しないでよ! ちょっと生ゴミ臭いし、正直なんだかよくわからないけど、あんたから貰った物は大事にするから!」

 師匠はそう言ってチケットを取り上げたが、私はそれを奪うとゴミ箱に戻した。

「もういいんだ。忘れてくれ」

「……ごめんね」

「……」

「本当にごめん」

「……」

「……お詫びに、ハンバーガーにパテ3枚挟んであげる」

「……」

「チーズも2枚」

「……」

「じゃあ3枚」

「…マッサージの券だったんだ」

 ゴミ箱を覗きながら言えば、師匠が謝罪の言葉を口にしながら私の手を握った。

「花何かより、ずっと嬉しい」

「本当か?」

「最近肩こり酷いし、マッサージされたいなぁっておもってたの」

 師匠の言葉と笑顔に、ようやく沈んでいた気持ちが浮上した。

「今からでも使うか? 10枚もついてるんだ」

「じゃあ食後にお願い」

 そう言って師匠は笑ってくれた。

 ずっと不安だったのは、この笑顔が花を贈った誰かに向いていたからかも知れない。

 花を愛でている時よりも美しいその笑顔に、ようやく私はホッとして、それから師匠の手を握りかえした。

「師匠のためなら私は何でもする。マッサージも掃除もするし、花だって摘んでくる」

「どうしたのよ突然」

「ただ師匠が望む物を贈りたいと、そう思っただけだ」

「…そういう台詞は、恥ずかしいからやめて」

 どうして恥ずかしがるのかと尋ねたが、師匠はこたえてくれなかった。

 それどころか、もう一度言ったらチーズを2枚に減らすと脅されたので、私は仕方なく黙った。

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