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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王とハンバーガーの章
4/102

Episode03 メイク

 この世界にきてすでに2週間がたった。家がない私を、少女はダイナーに住まわせてくれている。

 いまだ、なぜこの場所に自分がいるのかはわからない。もちろんもとの世界への帰り方もわからない。帰れると言われて帰るかどうかは別として。

 正直、私はこの場所を気に入り始めている。

 理由は二つ。一つ目はここにいれば毎食ハンバーガーが食べられる事。

 二つ目は、少女と暮らすの日々がそれなりに充実している事だ。

 少女はとにかく感情が豊かで、毎日一緒にいても飽きることがない。

 そしてもう一つ、時折聞くことできる少女の歌声。これが何よりすばらしい。

 といっても、歌う状況はもう少し考えて頂きたいところだが・・・。

 日頃は魔王であるこの私を虐げるほどの豪傑でありながら、時折どうしようもない間違いを起こすことが少女には多々ある。そしてそう言うとき、彼女は歌うのだ。

 ちなみに彼女の間違いのほとんどは、異性との交友関係だ。

 この少女、男らしいわりに、交際している男ににころっとだまされるのである。

 二股をかけられるのは日常茶飯事。最高で20又をかけられたこともあるらしい。そして売り上げをそう言う男に貢いでしまうため、店もボロいままなのだという。

 男にだまされた次の日はたいてい、少女はメイクもせず素顔のままで店に来る。その顔には泣きはらしたあとがくっきりで、そう言う日は店を開けず、テラス席に腰を下ろし一日中ギターという楽器を弾きながら失恋の歌を歌うのだ。

これが、非常に上手い。ただ聞いていると妙に切なくなるが。


「あたし、本当はカントリー歌手になりたかったの」

 歌の合間に、彼女がそうこぼしたことがある。

 この世界の歌い手にどのような物がいるかはわからないが、少なくとも私は彼女が夢をかなえるだけの声と素質があると私は思っている。

 ハンバーガーと同じくらい、彼女の歌声は私をこの世界に縛り付けるだけの魅力があったからだ。

 しかしいくら褒めても、彼女はそれを本気にとらない。

 ハンバーガーが好きな魔王の言葉は当てにならないと笑い、また続きを歌い出すのだ。

 仕方なく、私は彼女の側で彼女の歌を黙って聞き続ける。

 地平線に沈む夕日が荒野を赤く染め、失恋から少しだけ回復した彼女が、私のためにハンバーガーを作ってくれるまで、私は彼女の側で彼女の歌を聞き続ける。

※9/4誤字修正しました(ご指摘ありがとうございます)

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