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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
良い魔王と悪い魔王の章
37/102

Episode33 センス

 私はよく、師匠に服装が酷いと怒られる。

 と言っても元々は全て、師匠の亡き父親の服なのだが。

「あんたって本当に服のセンス最悪よね。何でよりにもよってそれを選ぶわけ?」

 そう言って、太陽とヤシの木とイルカが笑っているTシャツを師匠はなじる。

 割と気に入っていたのだが、それを言うと更に怒りそうなので、ビリビリにされる前に私はそれを脱いだ。

「今度の週末、お金上げるからチャーリーと買い物でも行ってきたら? あいつ、服のセンスだけは良いから」

 師匠に迫られ、私は早速チャーリーに電話をした。

「師匠に、服のセンスだけは良いチャーリーと買い物に行けと言われたのだが、週末はあいているだろうか」

 長く拘束するのは悪いと思ったので要点だけを伝えた所、電話は一方的にきられた。

 返事がなかったのが不安だったので、次の日曜日、私はチャーリーを家まで迎えに行くことにした。

 待ち合わせの時間を決めていなかったので、仕方なく玄関前で3時間ほど待っていると、物凄く不機嫌な顔のチャーリーが家から出てくる。

「お前はストーカーか!」

「違う、チャーリーが出てくるのを待っていただけだ」

「……約束はしてない」

「でも電話をした」

「アレが人に者を頼む態度か!」

「駄目なのか?」

 それは大変だと思い、私の至らぬ点を聞こうとしたが、チャーリーの眉間の皺が更に深くなっただけだった。

「服のセンスだけじゃなく、言葉選びのセンスもどうにかしろ」

「やはり、私は言葉選びのセンスも悪いのか?」

「自覚のないところがまた腹立つ!」

 といいつつも、やっぱりチャーリーは親友だ。

 その日一日かけて買い物に付き合ってくれた上に、長いまま放置していた私の髪をカットまでしてくれたのだ。お陰で、師匠の反応は上々である、これで当分は叱られまい。

「やだ、凄く良いじゃない!」

 そう言って私をなで回す師匠に、何故だかチャーリーが落ち込んだ。

「逆にダサダサにしてやれば良かった」

「ださださ?」

「見るにもたえない格好って事だよ」

「チャーリーはそっちの方が良いのか? それならば、角とか尻尾を出すが」

「せっかく買った服に穴が空くからやめろ」

 そう言うとチャーリーがあまりに落ち込んでいたので、私は師匠に内緒で、彼にタダでシェイクを作った。

「チャーリーが好きな物だけで作ったんだ、飲んでくれ」

「把握してるのかよ」

「バナナとバニラアイスとハチミツとパイナップルだ。さすがにピザとドクターペッパーは入れられなかったが、どれも好物だろう?」

「…こう言うところに女は弱いのか」

 口調はまだ落ち込んでいたが、上目遣いに美味しいと言ってくれチャーリーの顔は笑顔だった。

 その笑顔があんまり爽やかだったので、私は思わず嬉しくなる

「やっぱり私は、笑っているチャーリーが好きだな」

 そしてそのうれしさを言葉にした所、なぜかチャーリーはシェイクを吹き出した。

 その上顔まで赤らめている。

「そう言うのは男に言うな!」

「どうしてだ? チャーリーのことが好きなのは事実なのに」

 嘘をつくのはあまり好きではないので、私はそう主張した。

 だがなぜか、今度は側に来ていた師匠が驚いていた。

 そんな師匠を見て、チャーリーも驚いていた。

 見つめ合う二人。重い沈黙。

 その後、最初に泣き出したのは師匠だった。

「あんた達なんて大っきらい」

 何故だか持っていたお盆で私の頭を殴り飛ばし、師匠は厨房へと駆け込んだ。

「きらいって言われた……きらいって…」

 なにやらブツブツ呟くチャーリーの目は死者のようにうつろだった。

 しかし魔王である私は復活の魔法を使えないので、その後しばらくチャーリーの目は死んだままだった。

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