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魔王はハンバーガーがお好き  作者: 28号
魔王と友達の章
33/102

Episode30 バランス

 目の前に出された本日の夕食を、私は直視出来なかった。

「師匠…」

「なに?」

「今日も、サラダなのか」

「そうよ」

「……師匠を怒らせるような事を何かしただろうか?」

 ここ3日ほど、私は師匠からハンバーガー禁止令を言い渡されている。

「やっぱり、栄養のバランスが偏るのは良くないと思って」

「サラダばかりでも偏るのでは?」

「でもあんた、長い間ハンバーガー漬けだったでしょう? だからバランス取ろうと思って」

「健康に異常はない」

「私はあんたのこと心配してるのよ。もし何かあったら、嫌だし……」

 背けられた顔に、私は慌ててサラダを引き寄せた。

 ハンバーガーは食べたい。食べたいが、師匠が私の身を気遣ってくれているのに、我が儘を言えるはずがない。

「確かに師匠の言うとおりだ。もう少し、我慢する」

 レタスが山盛りのボールにフォークを突き立てて、私はそれを食していく。

「おかわりも、あるわよ」

 いつの間にか、私の前に置かれたサラダが5つに増えていた。

「これも体のためだ、貰おう」

「うん、どんどん食べてね」

「でもさすがに同じ味だと飽きてくるな」

「塩かければいいじゃない、塩」

 そう言って師匠は、サラダに大量の塩をふりかける。

「師匠、塩分の取り過ぎも体に悪いのではなかったか?」

「その分葉っぱ食べればチャラよ」

「そう言う物か」

「そう言う物よ。だからもっと食べて」

 気がつけば、サラダが5つから9つに増えていた。

「しかし師匠、こんなにレタスを消費してしまったら、店に出す分が無くなってしまわないか?」

「そこは気にしないで」

 そう言えば、冷蔵庫の中のレタスの量がいつもより多かった気がする。

 いつもの倍かそれ以上の量に発注ミスかと思ったが、どうやら師匠は私のためを思って、いつもより多く頼んでくれていたらしい。

「師匠は、本当に優しいな」

「良いから黙って食べて、何か胸が痛い」

「私も感動で胸が痛い」

「黙って」

「うむ」

 この日だけで、私は一生分のサラダを食べた気がする。


お題の提供は『6倍数の御題様』

http://www3.to/6title


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